米国の政治経済システムにおける「トランプイズム」の本質を象徴する疑惑のスキームが浮上している。トランプ前大統領が、IRS(内国歳入庁)を利用して、政治同盟者に10億ドル規模の資金を分配する計画を進めているという報道が、ABCニュースによって明らかになった。
同報道によると、トランプ氏はバイデン政権による「法制度の悪用」を主張する同盟者らに対し、17億ドルの新基金を設立し、補償金を支払うという内容の和解案をIRSとの間で進めているという。この基金は、「委員会」によって運営され、委員はトランプ氏が理由を問わず解任できるほか、支払い先や金額に関する意思決定も非公開となる可能性があるとされる。
議会の監督なし、トランプ氏が委員を解任可能
この「委員会」は5人で構成され、過半数の賛成で資金の支払いが決定される。しかし、支払い先や金額、審査プロセスは一切公開されないという。さらに、委員はトランプ氏が「理由を問わず」解任できるため、支払いに不満を持つ者が解任されるリスクも指摘されている。
この基金は、米財務省の判決基金(Judgment Fund)から拠出される見込みで、議会の監督を受けないとされる。判決基金は通常、政府機関が敗訴した際の賠償金支払いに使用されるが、今回のケースではトランプ氏が事実上、直接的なコントロールを握る形となる。
「憲法の裏切り」との批判も
このスキームに対し、民主党のジェイミー・ラスキン下院議員(司法委員会筆頭民主党員)は「憲法の驚くべき裏切り」と非難している。ラスキン議員は「トランプ氏が政府機関を自身の利益のために利用し、議会の監督を受けない資金を分配しようとしている」と述べた。
また、今回の報道は、トランプ氏が自身の政府機関を通じて、自身に有利な形で和解を進めている点でも注目を集めている。具体的には、トランプ氏が大統領在任中にIRSに対し、自身の税務情報漏洩に関する損害賠償として100億ドルの損害賠償請求を行っていた。通常であれば、政府機関はこのような請求に対し、法廷で争うか和解を拒否するのが通例だが、今回はトランプ氏が司法省を事実上支配しているため、自身に有利な和解が進められているという構図だ。
この一連の動きは、トランプ氏が大統領在任中から繰り返してきた「自己利益の追求」の象徴とも言える。支持者らは、こうした疑惑のスキームにもかかわらず、トランプ氏を支持し続けているが、その背景には「トランプイズム」の政治経済システムが存在しているとの指摘もある。