議会予算局が1.2兆ドルと試算

トランプ前大統領が推進する「ゴールデンドーム」国家ミサイル防衛システムの総費用が、議会予算局(CBO)の新たな試算で1.2兆ドルに達する可能性が明らかになった。同システムは、地上および宇宙ベースの迎撃システムで構成され、20年間の運用・開発費が膨らむ見通しだ。

CBOの内訳と課題

CBOの分析によると、獲得費用は「1兆ドル強」に上り、そのうち70%が宇宙ベースの迎撃システムに充てられる。トランプ前大統領は当初、総費用を1,750億ドルと見積もり、自身の任期内に「完全運用」を達成すると主張していたが、CBOはその実現性に疑問を呈している。

同報告書は、宇宙ベースの迎撃システムの開発には「少なくとも数年」を要すると指摘。さらに、工業基盤の能力不足や、イラン戦争で消費されたレーダー・迎撃システムの生産能力が課題となる可能性を示唆した。

「イスラエルのアイアンドーム」との違い

ゴールデンドームは、イスラエルのアイアンドームをモデルにしたとされるが、両者には大きな違いがある。アイアンドームは短距離ミサイルに対応するが、米国が想定するのは大陸間弾道ミサイル(ICBM)だ。専門家らは、長距離迎撃システムの実用性に懐疑的な見方を示す。

「長距離迎撃システムはこれまで多くのテストに失敗しており、実戦に近い条件下ではさらに困難が予想される。新たな取り組みが成功する可能性は低い」
ウィリアム・ハートゥング(クインシー研究所上級研究員)

米国全土(本土48州、アラスカ、ハワイ)を防衛対象とするゴールデンドームは、イスラエルよりも広大なエリアをカバーする必要があり、技術的・財政的なハードルは一層高い。

「スターウォーズ」との類似性と歴史的教訓

ゴールデンドーム計画は、レーガン政権時代の「戦略防衛構想(SDI)」、通称「スターウォーズ」との類似性が指摘されている。SDIは1983年に発表された宇宙ベースのミサイル防衛計画で、当時の技術では実現不可能と判断され、クリントン政権下で10年間・300億ドルを投じた後に中止された。

2025年6月、民主党のジェフ・マークリー上院議員はCBOに対し、ゴールデンドーム計画の費用対効果とリスクを調査するよう要請。同議員は、計画が「歴史的失敗のリスクをはらむ」と警告し、ロシアや中国の戦略核戦力に対抗する米国の外交政策の転換を招く可能性を指摘した。

米誌「リーズン」のマシュー・ペッティは2025年に、「これまで米国が核戦争を回避してきた最大の要因は、相互確証破壊(MAD)の原則だった」と指摘。ゴールデンドーム計画が核抑止力のバランスを崩す可能性を懸念する声もある。

今後の見通しと議論の行方

CBOの報告書は、ゴールデンドームの完成時期について具体的な見通しを示していない。しかし、宇宙ベースの迎撃システムの開発には「数年以上」を要する可能性が高く、技術的・財政的な課題が山積している。

専門家らは、ゴールデンドーム計画が米国の安全保障戦略に与える影響について議論を呼ぶと予想。一方で、軍事費の肥大化や技術的な実現可能性に対する懐疑的な見方も根強い。

出典: Reason