米国のトランプ前大統領は、南アフリカ政府が白人農民に対する「虐殺」を行っていると繰り返し主張してきた。特に2025年5月、オバマ事務所で南アフリカのラマポーザ大統領を前に、白人農民の集団墓地を示すとされる映像を提示し、注目を集めた。
しかし、こうした主張は事実に反するだけでなく、米国と南アフリカ双方の白人至上主義者によって拡散されてきたものだ。南アフリカ政府が白人を標的にしているのであれば、その手法は極めて稚拙と言わざるを得ない。
極左活動家マレマ氏の有罪判決
今週、南アフリカの裁判所は、極左で黒人ナショナリストの活動家ジュリアス・マレマ氏に対し、武器犯罪で有罪判決を言い渡した。2018年に行われた政治集会で、マレマ氏が違法な自動小銃を空に向けて発砲した事件が対象だ。判決は懲役5年だが、控訴中のため議員職を続けられる。
マレマ氏は、人種対立を煽る発言で知られ、与党アフリカ民族会議(ANC)を2012年に除名された後、経済的自由戦士党(EFF)を結成。2024年の選挙でANCが過半数を得られなかった際も、ANCは中道右派で白人多数の民主党(DA)と連立を組み、EFFを排除した。
さらに、南アフリカの差別撤廃裁判所は2025年8月、マレマ氏が2022年の集会で行った発言をヘイトスピーチと認定し、有罪とした。「白人の男に殴られることはない」「革命には時として殺人が必要だ」といった過激な発言が対象となった。これはマレマ氏にとって3度目の法廷闘争だった。
マレマ氏が実際に収監されるかは不透明だが、被害者意識を利用して支持を拡大する可能性もある。控訴で敗訴すれば、5年間の公職追放という厳罰も科せられる(米国にも同様の法律があればと嘆息せざるを得ない)。
南アフリカの白人政策と実態
南アフリカでは、白人優遇政策がむしろ進んでいる。例えば、土地改革政策では白人農民の土地が政府に買い上げられるが、その多くは黒人コミュニティに再分配されるものの、実際の強制的な追放は行われていない。また、白人社会は依然として経済的・政治的な特権を維持しており、白人至上主義者が主張するような「虐殺」や迫害は存在しない。
トランプ氏の主張は、白人至上主義者のプロパガンダに過ぎず、南アフリカの現実とは乖離している。むしろ、南アフリカ政府は白人コミュニティとの和解を進め、多様性を重視した政策を展開しているのが実態だ。