米国のAIデータセンター市場を巡るトランプ前大統領の野心的な計画が、計画段階から早くも暗礁に乗り上げている。AIデータセンターの「マスターデベロッパー」と銘打たれたフェルミ・アメリカ社が、安定収益や冷却システムなどの基盤整備に苦戦し、商業テナントの獲得すらままならない状況に陥っていることが明らかになった。
米メディア「Axios」の報道によると、フェルミ・アメリカはAIブームの最中にデータセンター事業を展開する上で不可欠な商業テナントを獲得できていない。これはデータセンター運営の前提条件とされる要素であり、同社の事業計画に深刻な懸念を投げかけるものだ。
さらに深刻な事態が進行中だ。米証券取引委員会(SEC)に提出された書類によると、フェルミ・アメリカのCEOであるトビー・ノイゲバウアー氏が突如として辞任を発表。同社の最高執行責任者(COO)と取締役が後任を務めることになった。その数日後には、最高財務責任者(CFO)のマイルズ・エヴァーソン氏も辞任した。
Axiosとのインタビューでノイゲバウアー氏は、自身の辞任について一切触れなかったものの、事業の困難さを率直に認めた。特にデータセンターの冷却システムに関するサプライチェーンの見通しを誤ったと明かした。同氏はLinkedInのプロフィールによると、過去28年にわたりベンチャーキャピタル業界で活動しており、コンピュータインフラの管理経験はほとんどなかった。
「サプライチェーンの現状を理解していなかったと認めざるを得ません。これは失敗です」
— トビー・ノイゲバウアー氏
驚くべきことに、ノイゲバウアー氏は会社の売却を提案したが、残された経営陣によって却下された。フェルミ・アメリカは声明で以下のように述べた。
「直近の経営陣の交代を踏まえ、当社はプロジェクト・マタドールの継続的な推進、潜在的テナントへのサービス提供、株主価値の最大化の観点から、売却は最善の選択ではないと判断しました」
プロジェクト・マタドールとは、テキサス州に建設予定の17ギガワット級データセンター計画の名称だ。しかし、肝心のテナント獲得が進まず、株主は大きな打撃を受けている。同社の株価は過去6カ月で約71%下落した。
ノイゲバウアー氏の判断は正しかったのかもしれない。フェルミ・アメリカは2025年に年間約5億ドルの損失を計上し、収益はゼロだった。損失が拡大する中で、同社の事業継続に疑問符が付いている。
この状況は、データセンター業界全体にとっても警鐘となる可能性がある。米国大統領でさえもAIデータセンター事業を軌道に乗せられない現状で、他の事業者にとってはさらに厳しい状況が予想される。