米国のトランプ前政権が2024年に導入した中国製品への高関税政策(いわゆる「リベレーション・デイ関税」)は、製造業の国内回帰を「大規模に加速させる」と主張されていた。しかし、直近のホワイトハウスの発表を裏付ける独立調査によると、その効果は限定的だったことが判明した。
世界的な経営コンサルティング企業ケアニーが発表した最新レポートによれば、トランプ政権の関税政策は「短期的な国内回帰の大幅な増加や、米国の輸入依存度の低下につながらなかった」と結論付けている。その一方で、関税は米国の輸入先の分散に影響を与えた。具体的には、中国からの輸入額が2024年比で1350億ドル減少(約10%減)した一方で、アジアの他13カ国(ベトナム、マレーシア、インドなど)からの輸入額は合計1930億ドル増加した。
このデータは、多くの国際企業が中国からの生産拠点を他の低コスト国へ移転させたことを示唆している。しかし、その多くが米国ではなく、アジア諸国へのシフトだったことが明らかとなった。また、カナダからの輸入は250億ドル減少したが、欧州からの輸入は620億ドル増加した。ただし、その多くは2024年の第1四半期に集中しており、関税発効前に企業が米国への輸入を急増させた可能性が指摘されている。年間を通した米欧間の貿易額はむしろ減少していた。
投資は増加したが、製造能力の向上は限定的
トランプ政権は米国の製造業投資の増加を強調してきたが、ケアニーのレポートによると、製造業への資本投資は2020年以降3倍に増加したものの、米国の製造能力はわずか1.5%しか向上していない。その理由の一つは、投資から実際の工場稼働までに数年を要する場合があるためだ。しかし、それだけではなく、関税を含む他の政府政策が障壁となっている可能性も指摘されている。
レポートは「労働コスト、インフラの制約、労働力不足などの構造的な障壁が、国内回帰の持続的な阻害要因となっている」と分析する。さらに「最大の課題は明確性と安定性の確保だ。これは概念的には簡単だが、過去12カ月間で実現が難しい状況が続いている」と結論付けている。
関税政策の副作用:不安定性とコスト上昇
トランプの関税政策は、中国からの製造業シフトという目的の一部は達成したものの、主な目標であった米国への製造業回帰は実現していない。それどころか、政策の不安定性や原材料コストの上昇、インフレ圧力の増大などが、製造業回帰の足かせとなっている可能性が高い。
ホワイトハウスは今後も米国工場への新たな投資をアピールし続けるだろうが、それらの投資は関税政策の結果ではなく、むしろそれにもかかわらず実現していることが次第に明らかになってきている。