米国のタイヤ大手グッドイヤーは、北カロライナ州ファイエットビルの工場を2024年末までに閉鎖すると発表した。同工場は1,700人以上を雇用しており、閉鎖により全員が職を失う見通しだ。
同社は声明で「市場競争力を強化し、事業の長期的な健全性を支えるための措置」と説明したが、実態は関税と原材料費の高騰が経営を圧迫した結果とみられる。今年の第1四半期には2億4,900万ドルの赤字を記録しており、前年同期の1億1,500万ドルの黒字から一転した。
グッドイヤーのCEO、マーク・スチュワート氏は「戦争による原材料コストの上昇が経営体質の強化を迫っている」と述べ、コスト削減策の一環として工場閉鎖を決定したと明かした。また、同社のCFO、クリスティーナ・ザマロ氏は「関税とインフレの影響で年間4億2,000万ドルの経済的負担が見込まれる」と説明した。
関税政策の矛盾点
グッドイヤーの経営悪化の背景には、トランプ政権による関税政策とイラン情勢の悪化が大きく影響している。同社は、米国がタイから輸入する天然ゴムに対し、2023年3月に関税を課した。しかし、米国にはゴムの原産地であるゴムの木が自生しておらず、事実上、全てのゴムを輸入に依存しているのが実情だ。
米国商務省は「タイのゴム産業の貿易黒字が米国の産業に脅威を与えている」と主張したが、専門家からは「関税は米国のゴム産業の雇用創出にはつながらず、むしろコスト上昇と売上減少を招くだけ」との批判が上がっている。元米通商代表補エド・グレッサー氏は「関税は航空機用タイヤやトラック用タイヤ、橋梁の振動ダンパー、医療機器など、米国の製造業全体に悪影響を及ぼす」と指摘した。
1,700人の雇用と地域経済への影響
ファイエットビルの工場閉鎖は、同地域の経済に深刻な打撃を与える。同工場は地元経済の重要な柱であり、閉鎖により地域の失業率が上昇するほか、関連産業への波及効果も懸念される。グッドイヤーは「可能な限り従業員の再雇用を支援する」としているが、具体的な再就職先の確保は困難とみられる。
「関税政策は米国の産業保護を目的としているが、実際には米国の製造業全体に悪影響を及ぼす。グッドイヤーのケースはその典型例だ」
—— 元米通商代表補エド・グレッサー氏