米国ニューイングランドに位置する「グロピウス・ハウス」は、バウハウスの創設者であり近代建築の巨匠、ウォルター・グロピウスが1938年に自邸として設計した歴史的建造物だ。同家は、木材、レンガ、野面積みの石材といった伝統的なニューイングランド建築の要素と、ガラスブロック、吸音プラスター、クロム製手すり、最新の設備機器など革新的な素材を融合させた空間として知られる。同家は現在、 Historic New England(歴史的ニューイングランド)によって一般公開されているが、敷地内のトイレは老朽化により利用できず、訪問者はビジターセンター脇に設置された仮設トイレを使用していた。

同団体のヴィン・チポラCEOは「年間約4,000人の訪問者が仮設トイレを利用しており、早急な改善が必要」と述べ、2024年秋に世界中のデザイナーを対象とした公衆トイレのデザイン・コンペを開催した。

バウハウスの精神を継ぐトイレデザイン

コンペの応募要件は、バウハウスのデザイン原則を踏まえた研究と反映、そして40年以上にわたる設備問題の解決という2つの目標に基づいていた。応募作品は、グロピウスがかつてガレージとして使用していたビジターセンターの延長として設置するか、または隣接地に独立した建物として設計する必要があった。また、ADA(米国障害者法)に準拠した設計で、2つのトイレと2つの洗面台を備えることが求められた。

最優秀賞に選ばれたイスラエル・シュトラウス氏(ハーバード大学デザインスクール卒、スミス大学建築学准教授)は、素材の選択こそが成功の鍵だったと語る。同氏のデザインは、グロピウスの建築思想を踏襲しつつ、機能性と美しさを両立させた空間を提案。同家の白い外壁や周囲の樹木と調和する落ち着いた印象ながら、最新の設備とバリアフリーに配慮した設計が評価された。

Historic New Englandは現在、シュトラウス氏のデザインをもとに実施設計を進めており、2026年の完成を目指している。同団体の関係者は「グロピウスの思想を体現したトイレが、同家の歴史的価値をさらに高めるだろう」と期待を寄せている。