米首都ワシントンD.C.のジャン・ピアロ連邦地検次長は先週、連邦準備制度理事会(FRB)のジェローム・パウエル議長に対する刑事捜査を継続すると表明していた。しかし、そのわずか2日後に捜査を中止する異例の展開となった。
3月11日、米連邦地裁のジェームズ・ボスバーグ主任判事は、FRB本部の改修工事に関する捜査をめぐり、ピアロ検察官が発行した2件の大陪審招致令状を却下した。同令状は、ワシントンD.C.のFRB本部改修工事の予算超過と、パウエル議長による上院銀行委員会での虚偽証言の疑いを調査するものだった。
しかし、ピアロ検察官は3月15日、捜査を中止すると発表。ボスバーグ判事はこの捜査がパウエル議長に対する「威嚇」であると結論付けており、その政治的動機が浮き彫りになった。
共和党議員も捜査の中止を求めていた
ノースカロライナ州選出のトム・ティリス上院議員(共和党)は、司法省に対し「パウエル議長に対するでっち上げの捜査を中止せよ」と要求していた。ティリス議員は、この捜査がFRBの独立性を脅かすとして、トランプ前大統領が指名した後任候補ケビン・ウォーシュ氏の承認手続きを阻止すると脅していた。
パウエル議長の「虚偽証言」疑惑とは
捜査の根拠となったのは、パウエル議長が昨年6月25日の上院銀行委員会で行った証言だった。議員らは改修工事に関する報道で指摘された「VIPダイニングルーム」「白大理石の使用」「屋上庭園」「イタリア産ハチミツ用のハチの巣箱」などの豪華設備について質問。パウエル議長は「VIPダイニングルームは存在しない」「新しい大理石は使用していない」「屋上庭園もハチの巣箱もない」と否定した。
しかし議員らは、この証言が首都計画委員会が承認した改修計画と矛盾すると主張。パウエル議長の発言が「虚偽」であるとの疑惑が持ち上がった。
共和党内からも批判の声
パウエル議長の金融政策に批判的な共和党議員であっても、この捜査には否定的な見方が多かった。そもそもパウエル議長に対する法的違反の証拠は見つかっておらず、捜査そのものが政治的動機に基づく「威嚇」だった可能性が高い。
ピアロ検察官によるパウエル議長への捜査は、トランプ前大統領が「敵対者を処罰する」ために司法制度を悪用した一例と指摘されている。同様の事例として、ピアロ検察官による議員の憲法で保障された言論に対する起訴未遂や、元FBI長官ジェームズ・コミー氏、ニューヨーク州司法長官レティシア・ジェームズ氏に対する却下された起訴などが挙げられる。