2020年代の経済は予測が難しく、さまざまな投資手法が注目を集めている。暗号資産や株のタイミング取引、さらには「予測市場」と呼ばれるギャンブル的な投資手法など、いずれも確実な利益を約束するものではない。それどころか、これらの手法は簡単に資産を失うリスクをはらんでいる。

そんな中、一見すると「簡単に儲かる」ように思える自動車関連の投資案件が注目を集めている。その方法とは、高級スポーツカーのフェラーリを購入し、マニュアルトランスミッションに改造するというものだ。実際に、2023年9月に米国のオークションプラットフォーム「Bring a Trailer」で販売されたフェラーリ599 GTB Fiorano(2010年式)は、257,500ドルで落札された。その後、テキサス州の専門ショップでマニュアル化改造が施され、走行距離約800マイルを経て、2024年初頭に328,500ドルで再び売却された。驚くべきことに、この価格は当時の状態1(コンクールレベル)の評価額を大幅に上回るものだった。

一見すると「簡単なお金儲け」のように見えるが、その裏には複雑な事情が存在する。フェラーリ599 GTB Fioranoは、2006年のジュネーブモーターショーで発表されたフロントエンジンV12グランツーリスモであり、それまでの575Mマラネロに代わるモデルとして位置づけられていた。612馬力、最高速度205マイル(約330km/h)というスペックを誇り、特に「HGTE(Handling Gran Turismo Evoluzione)」パッケージが人気だった。このパッケージはサスペンションの硬化、車高の低下、高性能タイヤ、20インチホイールの採用、そしてF1スーパーファストトランスミッションのシフトスピード向上などが含まれていた。

しかし、フェラーリのコレクターと新車購入者は必ずしも同じではない。2000年代のフェラーリにおいて、マニュアルトランスミッションは当時はあまり人気がなかった。むしろ、使いやすく高速なシフトが可能なF1トランスミッションの採用率が高かったのだ。特に599 GTB Fioranoの場合、2006年から2012年までの生産台数約4,000台のうち、マニュアルトランスミッションを搭載したのはわずか30台程度だったと言われている。そのため、マニュアル仕様はオプションリストから外れ、599 GTB Fioranoはフェラーリ史上最後のV12搭載車種でクラッチペダルが装備されたモデルとなった。

しかし、コレクション市場では状況が一変した。現在では、マニュアルトランスミッション仕様のフェラーリが人気を集めており、同じモデルでもF1トランスミッション仕様とマニュアル仕様では価格に大きな差が生じている。そのため、一部のオーナーはF1トランスミッション仕様の車両をマニュアル化する改造に踏み切っている。今回のケースもその一例であり、改造後の車両は大幅な価格上昇を実現した。

とはいえ、このような改造が常に利益につながるわけではない。改造には多額の費用と時間がかかる上、改造後の車両がコレクターから高く評価される保証はない。また、フェラーリの公式ディーラーやメーカーは、こうした改造を公認していない場合が多く、保証やサポートが受けられないリスクも存在する。そのため、フェラーリ599のマニュアル化改造による利益獲得は、一見すると簡単に見えても、実際には非常に難しい選択肢であると言えるだろう。

出典: Hagerty