米国のゲーム開発会社ウィザーズ・オブ・ザ・コースト(WotC)で、マジック:ザ・ギャザリング・アリーナの開発に従事する従業員100人超が、労働組合「United Wizards of the Coast」を結成した。同組合は米通信労働者協会(Communications Workers of America, CWA)傘下に属し、5月1日までに会社側による団体交渉権の承認を求めている。
組合結成の背景には、リモートワークの制限やAI導入に関する経営方針の変更がある。同社は2023年以降、従業員に対し「オフィス復帰」を義務付ける方針を打ち出し、さらに生成AIの導入も進めている。これらの動きに対し、従業員らは「雇用条件の一方的な変更」と反発し、団結を強めた。
組合結成の経緯と主な要求事項
「United Wizards of the Coast」は、マジック:ザ・ギャザリング・アリーナのゲームデザイナー、アーティスト、エンジニア、プロデューサーらが中心となって結成された。同社の従業員で構成される組合としては初めてとなる。
主な要求事項は以下の通り:
- レイオフ時の保護措置の強化:不当解雇やリストラ時の手続き明確化
- リモートワークの維持:従業員の雇用条件として提示されたリモートワークを継続
- 生成AI導入に関する透明性:AI導入時の従業員との協議プロセスの確立
- 過重労働(クランチ)の防止:持続可能なワークロードの設定
- 従業員の創作物に対する所有権の見直し:ハズブロ(WotCの親会社)による、業務外を含む従業員の創作物の所有権取得方針の廃止
従業員が直面する課題
組合結成を主導したローグ・ケスラー(デジタルプロダクトマネージャー)は、経営陣とのコミュニケーションが悪化し、一方的な方針決定が増えたと指摘する。「経営側の態度が『我々のやり方か、さもなくば辞めろ』という雰囲気になり、団結せざるを得なくなった」と語った。
バレンタイン・パウエル(シニアソフトウェアエンジニア、組合組織委員)も、リモートワークの制限を強く批判する。パウエルは採用時にリモートワークが可能と伝えられていたが、現在は「今後2年以内にシアトルへの転居が義務付けられた」という。パウエルは「ハズブロの誰かが突然、『オフィスに戻ってこい』と言ったが、WotCの社内では誰もそれに対抗できない」と証言した。
ケスラーは、このような状況が同チーム内で「非常に一般的」だと述べた。「チームは急成長し、優秀な人材をシアトル圏外からリモートで雇用してきた。しかし、その人材の労働を数年活用した後、突然リモートワークが認められなくなった。雇用条件が一方的に変更されたのだ」と説明した。
会社側の対応と今後の展望
「United Wizards of the Coast」は、会社側に対し、5月1日(国際労働者デー)までに団体交渉権を自主的に承認するよう求めている。同日に承認が得られない場合は、全米労働関係委員会(NLRB)への投票請求を提出するとしている。また、会社側が自主的に団体交渉権を認めた場合は、NLRBへの請求を取り下げる方針だ。
ケスラーとパウエルは、ファンに対し「組合への支持」を呼びかけている。「私たちのファンに、この状況を理解し、支援してほしい」と述べた。