メイヨー・クリニックがAI録音導入、救急外来でも
米国の大手医療機関メイヨー・クリニックは、看護師と患者の会話をAIで自動録音する「アンビエント・リスニング」と呼ばれる技術を導入している。この録音は、救急外来を含む医療現場で行われており、録音データはAIによって処理され、電子カルテへの自動入力に活用されている。
オプトアウト方式で患者の認識不足も
録音はオプトアウト方式で行われており、患者が明示的に拒否しない限り録音が継続される。このため、多くの患者が録音されていることに気づいていない可能性がある。ある患者の家族は、救急外来で父親の診療中に掲示された注意書きの写真を公開し、その小ささと設置場所の悪さから「誰も気づかないだろう」と語った。
注意書きには、録音によって米国の医療データ保護法HIPAAの対象となる情報が収集される可能性があることが明記されている。しかし、緊急時には患者や家族が注意書きに気づかないケースも多く、倫理的な問題が指摘されている。
AIによる医療記録作成の課題
AIによる医療記録の自動作成は、看護師の負担軽減につながる一方で、精度の問題も指摘されている。昨年発表された研究では、AIが生成する医療記録は状況によって人間の記録よりも精度が低くなる場合があることが明らかになった。メイヨー・クリニックは、医療技術大手EpicとAI企業Abridgeと提携し、看護師向けのAIドキュメントワークフローを開発している。
他の医療機関でも導入が進む
メイヨー・クリニックは2024年にAbridgeと包括的な契約を締結し、約2,000人の医療従事者がこの技術を利用している。また、ジョンズ・ホプキンス医療機関も2024年12月にAbridgeのプラットフォームを導入し、6,700人以上の医療従事者と6つの病院、40の医療センターで運用を開始した。
Abridgeによると、同社の技術は「医療システム向けのエンタープライズグレードのAI」として、医療従事者や看護師の業務効率化と収益サイクルの改善に貢献するとされている。しかし、患者のプライバシー保護やインフォームドコンセントの確保といった課題も残されている。
「緊急時には患者や家族が注意書きに気づかないケースも多く、倫理的な問題が指摘されている」
— 匿名の患者家族
AI活用の是非を巡る議論
医療現場におけるAIの活用は、業務効率化や医療の質向上につながる一方で、患者のプライバシーやデータの正確性、インフォームドコンセントの確保といった課題が浮上している。メイヨー・クリニックの事例は、AI技術の進展とともに、医療倫理に関する議論を加速させる可能性がある。