2022年のオークションで1億36,150ユーロ(当時の為替レートで約1億7,200万円)という驚異的な落札額を記録した1976年式フォード・ブロンコが、2026年にはわずか5万ドルで落札されるという結果に終わった。セレブリティ所有車へのプレミアムがかつての勢いを失いつつあることを示す象徴的な事例となった。
伝説のF1ドライバー、ジル・ヴィルヌーヴの愛車
このブロンコは、カナダ出身の伝説的F1ドライバー、ジル・ヴィルヌーヴ(1950-1982)が所有していた車両だ。6度のグランプリ優勝を誇るヴィルヌーヴは、フォードの熱心なファンであり、このブロンコも新車で購入したとされる。しかし、1982年にレース中の事故で早すぎる死を迎えた後も、この車は手つかずの状態で残されていた。
ヴィルヌーヴはこの車を実用的に使用していた。モンテカルロやアルプス地方でドライブしていたという記録もあり、コンパクトながらも頑丈で、オフロード性能にも優れたこの車は、当時の彼にとって理想的な「街乗りとアウトドアの両用車」だったようだ。
ヴィルヌーヴによるカスタマイズの数々
ヴィルヌーヴはこのブロンコに独自の改造を施していた。サスペンションのリフトアップ、フェンダーの拡幅、カラフルなレカロ社製バケットシートの装着などだ。エンジンも改造されていたが、具体的な内容は明らかになっていない。また、デュアル燃料タンクや重荷重用ショックアブソーバーが装備されていたかどうかも不明だ。当時のブロンコには、予備燃料タンクや重荷重用サスペンションがオプションで用意されていたため、これらはヴィルヌーヴによる改造か、それとも工場出荷時の仕様か判断がつかない。
一方で、ダグ・ナッシュ製5速ギアボックスとハースト・コンペティションシフターは、明らかに非純正の改造品だ。これらの改造により、このブロンコは50年後の現代でも通用する、力強く個性的な外観を手に入れていた。
落札額の急落が示すセレブリティ効果の変化
2022年のオークションでは、ヴィルヌーヴの所有車というプレミアムが加味され、通常の同型車の2倍以上の価格で落札された。当時、この落札額はレースドライバー所有車の価値ランキングで2位にランクインするほどのインパクトを与えた。しかし、2026年の再オークションでは、そのプレミアムが大幅に縮小し、わずか5万ドルという結果に終わった。
この急落は、単に市場の動向だけでなく、セレブリティ所有車への過剰な期待が薄れつつあることを示唆している。かつては「セレブリティ効果」が価値を押し上げる要因とされていたが、今ではその効果が限定的なものになりつつあるのかもしれない。
ヴィルヌーヴのブロンコの特徴
- 年式とモデル:1976年式フォード・ブロンコ(初代)
- 所有者:ジル・ヴィルヌーヴ(カナダ出身F1ドライバー)
- 改造点:リフトアップサスペンション、拡幅フェンダー、レカロバケットシート、エンジン改造、ダグ・ナッシュ5速ギアボックス、ハーストシフター
- 状態:未修復のオリジナル状態(ルーフのサビ、クロムのピット、リアフェンダーの塗装剥がれが見られる)
- 落札額推移:2022年:1億36,150ユーロ(約1億7,200万円)→ 2026年:5万ドル