共和党議員が推進する労使交渉迅速化法案
近年、米国の政治右派の間で労働組合支持の動きが広がりを見せている。ドナルド・トランプ前大統領は再選キャンペーン中、ミシガン州でストライキ中の自動車労組(UAW)を訪問するなど、労組との関係強化をアピール。副大統領候補のJD・バンス議員や上院議員のジョシュ・ホーリー氏(共和党・ミズーリ州)も同様の立場を示し、注目を集めてきた。
「労使契約迅速化法案(FLCA)」の概要
その中で特に注目されているのが、ホーリー議員が提案する「労使契約迅速化法案(Faster Labor Contracts Act、FLCA)」だ。同法案は、労働組合が認められた企業で、交渉開始から90日以内に労使間の契約を成立させることを義務付ける。交渉がまとまらない場合は30日間の調停を経て、政府主導の仲裁委員会が契約内容を決定する仕組みとなっている。
仲裁委員会は、企業側と労組側がそれぞれ1名の仲裁人を指名し、第3の仲裁人は連邦調停調停局(Federal Mediation and Conciliation Service)が任命する。この委員会が最終的に契約内容を強制的に決定する権限を持つことから、民間の交渉主体性が奪われる懸念が指摘されている。
議会での動きと今後の展望
FLCAは今期の議会で、ホーリー議員が上院に、下院では99人の議員が共同提案者として名を連ねている。このうち17人が共和党議員で、民主党議員も13人加わっている。下院では、マイク・ジョンソン下院議長がこれまで法案の審議を拒否してきたが、先月には「除外決議(discharge petition)」が提出され、議員の過半数の支持が得られれば法案が本会議に上程される可能性が出てきた。
下院少数党院内総務のハキーム・ジェフリーズ議員(民主党・ニューヨーク州)は、除外決議が「間もなく」必要な票を獲得すると発言。また、同法案の共同提案者である共和党議員のブライアン・フィッツパトリック議員(ペンシルベニア州)は、「戦略を練っているところだが、問題は『いつ』ではなく、『必ず実現する』ことだ」と述べ、強い自信を示している。
憲法上の問題と政府機関の復活
「FLCAは、憲法上の問題を抱えているだけでなく、腐敗した政府機関を復活させ、企業と労働者双方の声を奪う悪法だ」
─ 経済政策専門家の見解
同法案は、労使交渉の迅速化を目指す一方で、政府主導の仲裁が民間の自主性を侵害する可能性があるとの批判が根強い。また、連邦調停調停局の権限強化は、過去の腐敗問題を再燃させる懸念も指摘されている。
今後、除外決議の行方や議員間の調整次第で、FLCAの行方が大きく左右されることになる。労使関係のあり方を巡る議論が、米国政治の新たな焦点となる可能性も出てきた。