米国では家計費の高騰が深刻化する一方で、気候政策への関心が低下しているとの指摘があった。しかし、左派系シンクタンク「Climate and Community Institute(CCI)」は、気候危機が生活費高騰の根本原因であり、脱炭素化が経済安定化の鍵になると主張する新たな政策プラットフォームを発表した。

「Stop Greed, Build Green」と名付けられたこの提案は、気候政策を経済的負担ではなく、むしろ生活費削減の手段として位置づける「グリーン経済ポピュリズム」の枠組みを示している。CCIは、連邦議員アレクサンドリア・オカシオ=コルテス氏やバーニー・サンダース議員らの政策立案を支援してきた団体であり、ニューヨーク州の革新的な公営電力法制定にも貢献してきた。

同団体の提案は、気候政策が「生活をより困難で高価にする」との一般的な認識に対する反論でもある。CCIの設立アドバイザリーボードメンバーで著名な作家ナオミ・クライン氏は、「このアプローチは、排出削減が生活を悪化させるとの認識を直接覆す強みがある」と述べた。

CCIは先日、ニューヨークで開催された発足イベントで「労働者階級の気候アジェンダ」を発表。ルイーズ・イェウン氏(ニューヨーク州議会議員ザーラン・マンダニ氏の気候担当チーフ)や米国民主社会主義者協会の代表者、コーネル大学気候雇用研究所のメンバーらが登壇した。さらに1週間後にはワシントンD.C.で議員や元ホワイトハウス高官、学者、労働組合リーダーらとのパネルディスカッションを開催し、政策提言を発信した。

同団体は、CCIと進歩的世論調査会社「Data for Progress」による共同調査の結果も公表した。それによると、有権者の70%(共和党支持者の65%を含む)が気候政策が生活費削減につながると信じていることが明らかになった。これは、トランプ前大統領をはじめとする右派ポピュリストがターゲットとしてきた労働者層が、気候政策に対して受容的である可能性を示唆している。

CCIの研究部長パトリック・ビガー氏はニューヨークでのイベントで、「人々が日々感じている経済的苦痛は、資本と政府による労働者への長年の投資不足の結果だ」と語った。民主党や進歩派の間でも生活費高騰と気候問題の関連性が指摘されているが、CCIは短期的な対策にとどまらず、企業権力への対抗や労働組合・社会運動と連携した経済民主主義の実現を目指している。

CCIの上級フェローで政治経済学者のラキーン・マブード氏は、「真の経済的負担軽減は、株主や企業幹部の財布ではなく、経済システムそのものを再構築することで実現できる」と述べた。このアプローチは、サニライズムovementによって広められた「グリーン・ニュー・ディール」の理念をさらに発展させたものだ。

「気候危機は、単なる環境問題ではなく、経済の不安定化と生活費高騰の根本原因だ。我々の提案は、この問題を解決するための具体的な道筋を示す」
— CCI代表者

CCIの動きは、気候政策が政治的に受け入れられにくいとの従来の見方に一石を投じるものだ。同団体は今後、議員との協議を重ねながら、労働者層を中心とした支持基盤の拡大を図っていく方針だ。