司法省が384人の市民権剥奪を計画
米司法省は、不正な手段で米国市民権を取得した疑いのある外国生まれの米国人384人を対象に、市民権剥奪の手続きを進める方針を示した。ニューヨーク・タイムズが8月29日付で報じた。
司法省は、全米39の地方検事局に対し、これらの個人に対する訴訟準備を指示。2024年には81万8千人以上が米国市民となったが、そのうちのわずか384人とはいえ、この動きは「危険な前例」となる可能性がある。今後、新たに市民権を取得した人々が大規模に剥奪される事態につながる懸念が指摘されている。
市民権剥奪の対象となるケース
市民権の剥奪は、犯罪行為や不正な取得(例えば偽装結婚)があった場合に可能となる。政府が市民権を剥奪する権限は法的に認められているが、その実施は稀なケースとされてきた。1990年から2017年にかけては年間平均11件、トランプ前政権下でも年間15件程度にとどまっていた。
しかし、今年は19世紀初頭以来の規模で市民権剥奪が行われる見通しだ。国土安全保障省には、司法省が訴訟を起こせるよう、月に200件以上の剥奪対象ケースを特定するよう指示が出されたという。
市民権剥奪の法的プロセスと課題
市民権剥奪の対象者は、大統領選挙への立候補を除き、生まれながらの米国市民とほぼ同等の権利を有している。政府は、市民権剥奪の根拠を立証するために、民事または刑事裁判を経なければならない。ニューヨーク・タイムズは、このプロセスを「困難かつ時間のかかるもの」と表現している。
また、対象者は判決に対して控訴することも可能であり、これによりすでに膨大な移民関連訴訟で逼迫している裁判所の負担がさらに増大することが懸念される。
政治的な悪用の懸念も
トランプ政権は、犯罪や詐欺を行った者のみを対象としていると主張しているが、トランプ大統領の人種差別的な発言や「アンティファ」をテロ組織に指定するなどの動きは、特定の移民グループを標的にするために市民権剥奪を悪用するのではないかとの懸念を招いている。
バージニア大学のアマンダ・フロスト法学教授は同紙に対し、「政府は過去に、政敵とみなす人々を標的にこの権限を悪用してきた」と語った。
市民権剥奪の歴史的背景と今後の展望
米国では、市民権剥奪は歴史的に政治的な圧力や差別的な政策の一環として行われてきた経緯がある。特に19世紀初頭には、移民排斥の動きが強まり、市民権剥奪が頻繁に行われた時期もあった。
現在の動きが、単なる法執行の強化なのか、それとも特定のグループへの圧力強化なのか、その真意が注目される。専門家らは、今後の裁判の行方とともに、米国の移民政策の方向性が問われることになるだろう。