暗号資産(仮想通貨)のプライバシー技術は、量子コンピュータによる暗号解読の脅威から免れることが、最新の研究で明らかになった。Coinbaseが主導する研究チームは、スタンフォード大学やイーサリアム財団と共同で、ゼロ知識証明システムやミキシングサービスが量子攻撃に対して数学的な耐性を持つことを確認した。
これらのプロトコルは、情報の構造と共有方法に基づく情報理論的な安全性を持ち、暗号化に依存しないため、無限の計算能力を持つ攻撃者に対しても耐性を発揮する。研究結果は、DL Newsに共有された。
量子コンピュータの脅威が高まる中で
近年、量子コンピュータの急速な進化が暗号資産のセキュリティに対する懸念を引き起こしている。2024年1月には、UBS CEOのセルジオ・エルモッティ氏や、ジェフリーズの株式戦略責任者クリストファー・ウッド氏、ヘッジファンド運用者のレイ・ダリオ氏らが、ビットコインの脆弱性について警鐘を鳴らした。
さらに3月には、Googleが発表したレポートで、新型量子コンピュータがビットコインやイーサリアムなどの暗号資産を保護する暗号をわずか9分で解読できる可能性があると指摘された。研究チームは「大規模な耐障害性を持つ量子コンピュータが最終的に実現されることは確実であり、ブロックチェーンはこの脅威に備える必要がある」と主張している。
一方で、同研究は脅威が差し迫ったものではないことも強調しており、パニックではなく準備を進めることが重要だと提言している。この見解は、4月に量子コンピュータを「新奇でも存在的でもない」と表現したバーンスタイン社とも一致している。
最も脆弱な資産とは
研究によると、最もリスクが高いのは、楕円曲線署名で保護された資産だという。特に、公開鍵がオンチェーンで既に公開されている資産が狙われやすい。ビットコインはその典型例であり、研究チームによれば、約690万BTCが公開鍵を晒したアドレスに保管されている。このうち170万BTCは古い「ペイ・トゥ・パブリック・キー(Pay-to-Public-Key)」形式のアウトプットであり、初期の「サトシ時代」のコインも含まれる。
十分な性能を持つ量子コンピュータが実現すれば、これらの公開鍵は収集・解読され、資産が奪われる可能性がある。特に、1,000BTC以上を保有する大口アドレスは、最初の標的となる見込みだ。研究チームはこれらのアドレスを「カナリア」に例え、突然の動きは市場に重大な変化をもたらす兆候になると指摘している。
チェーンコード・ラボの調査によれば、ビットコインの20%から50%に相当する約9,000億ドル分のコインが、このシナリオで脆弱になる可能性があるという。
対策は進むが、課題も残る
こうした脅威に対抗するため、ビットコインのコミュニティでは、署名の脆弱性を軽減する提案「BIP360」が進められている。また、イーサリアム財団は、2025年までにネットワーク全体をアップグレードする4段階のロードマップを発表している。
しかし、量子コンピュータの脅威が完全に解消されたわけではなく、今後も研究と対策の強化が求められる。