米国では電気代の高騰が家計を圧迫しており、特に電気抵抗式暖房や従来型の電気温水器を使用している世帯ではその負担が顕著だ。エネルギー専門の非営利団体RMIが発表した最新の分析によると、こうした世帯がヒートポンプに切り替えることで、年間平均1,530ドル(約23万円)の節約が見込めるという。さらに、ヒートポンプの寿命期間(約15年)を通じての総節約額は23,000ドル(約345万円)に上る。
同分析によれば、全米の電気暖房世帯が一斉にヒートポンプに切り替えた場合、年間で200億ドル以上の電気代削減と、3,800万トンのCO2排出削減が実現するという。なお、この試算には集合住宅は含まれていないため、実際の削減効果はさらに大きいとみられる。
また、ヒートポンプへの切り替えは電力網の負荷軽減にも貢献する。RMIのカーボンフリー建物チームマネージャー、ライアン・シェア氏は「電気抵抗式暖房は巨大なトースターのようなもので、非常に非効率な暖房方法です」と語る。実際、米国では約2,500万世帯が電気抵抗式暖房を、約5,700万世帯が同じ技術を用いた温水器を使用しているという。一方、ヒートポンプは熱を移動させる仕組みで、従来の暖房方式と比べて3倍以上の効率を誇る。さらに、冷房機能も備えており、古いエアコンよりも20%効率が高いのが特徴だ。
RMIが提供する「Green Upgrade Calculator」を使えば、自宅の住所を入力するだけで、具体的な節約額を試算できる。特に寒冷地や電気代の高い地域(東北部など)では、数年で投資回収が可能なケースも多い。例えばテキサス州では、古い暖房技術がいまだに広く使われているが、全世帯がヒートポンプに切り替えれば、年間で約20億ドルの節約が見込まれるという。
テキサス州における大規模な切り替えは、電力網の安定化にも寄与する。シェア氏は「効率性の向上によりピーク時の電力需要を大幅に抑制でき、スケールメリットで電力網の課題解決につながります」と指摘する。具体的には、テキサス州の冬季ピーク需要を7.5ギガワット(25基のガス火力発電所に相当)削減できる可能性があり、これにより2021年の「冬季ストームUri」のような大規模停電リスクを低減できるほか、新たな発電所建設の遅延にもつながり、長期的な電気代の抑制にも貢献する。
同分析は電気抵抗式暖房に焦点を当てているが、RMIの計算ツールは他の暖房方式(灯油やプロパン)や温水器についても節約額を試算できる。灯油やプロパンは電気よりも高額な場合が多く、ガスは状況によっては安価だが価格変動が激しい。多くの州では、化石燃料からの脱却を促すための補助金やインセンティブ制度も充実している。政策面からの後押しも、ヒートポンプ普及の追い風となるだろう。