米国の首都ワシントンD.C.で活動する新たなジャーナリストたちが、政治家のゴシップを追う姿が見られるようになった。その中心にいるのが、セレブリティゴシップサイト「TMZ」の報道陣だ。同社は先週、首都圏に拠点を新設し、政治家のスキャンダル報道に力を入れ始めた。
TMZの創設者ハーヴェイ・レヴィンは最近、議員たちが国会の休会期間中に「仕事以外の写真」を一般市民に求めるキャンペーンを展開するなど、政治家の私生活に踏み込んだ報道を展開している。こうした報道手法は、政治家の「タブロイド化」を象徴する動きの一環と言えるが、その起源は1980年代のゲイリー・ハート上院議員(民主党・コロラド州)のスキャンダルにまで遡る。
ゲイリー・ハート事件とは
1987年当時、ゲイリー・ハート上院議員は1988年の民主党大統領候補指名レースの最有力候補と目されていた。しかし、ある1週間でその地位は崩壊した。当時の報道によると、ハート議員は妻以外の女性と不倫関係にあり、その女性とヨットで一夜を過ごした後、自宅のタウンハウスでも関係を持ったとされる。このスキャンダルは、報道陣がハート議員の自宅周辺の茂みに隠れて尾行するなど、徹底的な取材の末に明るみとなった。
この事件は、政治家の私生活が報道の対象となる「転換点」となった出来事として知られている。当時の報道は、政治家の不倫疑惑を積極的に追及するという新たなスタイルを確立し、ハート議員は「これはあなた方の知るべきことではない」と反論したが、もはや通用しない時代が到来していた。
政治家のタブロイド化の始まり
当時の報道環境は、衛星技術の発展と24時間ニュースサイクルの幕開けと重なっていた。ハート議員は古い時代の倫理観に基づき、私生活への干渉を拒否したが、もはやそのような主張は通用しない時代が到来していた。
ローリングストーン誌のコラムニスト、マット・バイ氏は、ハート事件を描いた著書『All the Truth Is Out: The Week Politics Went Tabloid(全ての真実は公開された:政治がタブロイド化した1週間)』の中で、ハート事件が政治家の「タブロイド化」の象徴的な出来事であったと指摘している。同氏は「ハートは、後に続く政治家たちが受けるであろう扱いを予見していた」と述べている。
TMZのDC進出は、政治家の私生活報道が今後ますます加速することを示唆している。ハート事件から30年以上が経過した現在、政治家のスキャンダル報道は、単なるゴシップから、選挙や政策に影響を与える重要な要素へと変化しつつある。