フォード・マスタング・マッハ1といえば、1960年代後半から1970年代初頭にかけて活躍したレーシングマシンの代名詞だった。しかし、2003年から2004年にかけて発売された「ニュー・マッハ1」は、往年の名車のDNAを受け継ぎながらも、現代的な走りと実用性を兼ね備えたモデルとして注目を集めた。
そのニュー・マッハ1を22年以上にわたり乗り続け、ストリートで圧倒的な存在感を放っているのが、ミシガン州在住のグレッグ・リーファー氏だ。リーファー氏は、そのマッハ1を「派手な見た目ではないが、パワーは本物」と語る。鮮やかなオレンジのボディに、洗練されたホイールを纏ったマッハ1は、一見すると「ただの美しい古いマスタング」に見えるかもしれない。しかし、その実力は計り知れない。
1/4マイルで9秒未満、最高速度150マイル(約241km/h)を記録するという驚異的な加速力を持つこのマッハ1は、ストリートで走るにはあまりにも強力すぎる存在だ。リーファー氏は「トラックの世界で育った人間だからこそ、この車のポテンシャルを最大限に引き出すことができたのかもしれない」と語る。
リーファー家はトラック業界と深い縁がある。祖父は1930年代にトラック運送会社を起業し、当時若き日のジミー・ホッファを運転手として雇っていたという逸話もある。父親は1950年代にトラック販売店を開業し、業界の浮沈を乗り越えてきた。そしてリーファー氏自身も1989年にピータービルトのフランチャイズを取得し、現在に至るまで事業を拡大し続けている。
トラック業界は「楽しい仕事」ではないとリーファー氏は言う。だからこそ、10代の頃から「楽しむための車」にこだわってきた。19歳の時に手に入れた1969年式マスタング・コブラジェットは、9万マイル(約14万km)走行の古参車ながら、彼にとっては「走りの原点」となった逸品だ。
その後も多くの車を所有してきたリーファー氏だが、2004年に新しい車を探していた時、妻のキムさんから「楽しい車に乗りなさい」と背中を押されたという。キムさんとの出会いは高校時代に遡り、今年で結婚50周年を迎えるという二人は、まるで幼稚園で出会ったばかりのような若々しさを保っている。
リーファー氏は自動車販売の免許を持っているため、新しい車を探す際には地元のオークションに足を運ぶことが多かった。そこで彼は、2004年式マッハ1の赤いモデルを目にする。エンジンルームを開けると、32バルブ4.6リットルV8エンジンのカムカバーが見え、一目惚れしたという。しかし、オークションで他の入札者に負けてしまったため、仕方なく地味なフォード・タウラスを購入したというエピソードもある。
だが、幸運の女神はリーファー氏を見放さなかった。オークションから帰る途中、駐車場に「売ります」と書かれたオレンジの2004年式マッハ1を見つけたのだ。しかも、その色は彼にとって特別な意味を持っていた。過去にオフロードレース用のオレンジのインターナショナル・スカウトや、大型フォードV8エンジンを搭載したオレンジのジェットボートを所有していたからだ。
リーファー氏は「この車はただのマッハ1ではない。私の人生とともに歩んできた特別な存在だ」と語る。彼の手によって、この22年以上にわたるマッハ1は、今もなおストリートでその存在感を示し続けている。