AI技術の進展とともに、ニュースメディアの在り方にも変化が生じている。そんな中、AI業界を推進する主張を展開するニュースサイトが、実在しない人間の記者を装ったAIエージェントを活用し、専門家からのコメントを収集していたことが明らかになった。
調査報道メディア「Model Republic(モデル・レパブリック)」の調査によると、そのサイトは「The Wire by Acutus」と名乗り、2025年12月29日に開設された。同サイトには人間の寄稿者が存在しないとみられ、公開されているコードや分析から、記事の97%が完全または部分的にAIによって生成されている可能性が高いことが判明した。
具体的には、AIが質問を生成し記事を執筆する際に使用する「背景情報」や、AIインタビュアーに提案する「質問候補」を入力するフィールドが確認された。また、RSSフィードにはAIによる自動編集プロセスが記載されており、5段階のうち4段階がAIによって行われ、人間が関与するのはわずか1段階のみ。その編集プロセスにかかる平均時間はわずか44秒だったという。
さらに特筆すべきは、同サイトが人間の専門家からコメントを集めるためにAIエージェントを活用していた点だ。例えば、AI倫理団体「Encode」の副社長兼法務責任者であるNathan Calvin氏は、テネシー州のAI関連法案についての記事執筆依頼を受けたという。依頼メールは「Michael Chen」という記者を名乗るAIエージェントから送られたが、ウェブ検索で「Michael Chen」という記者の存在は確認できず、メールアドレスも「[email protected]」という一般的なものだった。加えて、サイトのクライアントサイドコードには「AIインタビュアー」や「レポーター・エージェント」といった表現が見られた。
同サイトとOpenAIとの関係も注目を集めている。同サイトの記事は、ソーシャルメディアプラットフォームX(旧Twitter)上で、共和党系PR会社「Novus Public Affairs」の社長Patrick Hynes氏によって複数回拡散されていた。Novusは、OpenAI社長Greg Brockman氏が共同設立した政治団体「Leading The Future」を支援するTargeted Victory社と提携関係にある。これらのつながりは直接的な証拠ではないものの、OpenAIの超党派政治活動委員会(super PAC)が同サイトを通じて政治的な主張を展開している可能性を示唆している。
Model Republicは、これらの状況を踏まえ、「OpenAIのsuper PACがAcutusを通じて政治的な意図を推進している可能性がある」と指摘している。しかし、OpenAI側からの公式なコメントは得られていない。
AI技術の発展は、ニュースメディアの透明性や信頼性に新たな課題を投げかけている。今後、AIを活用したニュースサイトの実態について、さらなる監視と議論が求められるだろう。