BMW傘下に完全移管された高級スポーツカー専門メーカー「アルピナ」が、新たなステージへと突入する。同社は2022年3月にBMWにより推定6000万ユーロで買収され、2026年1月1日にブランド統合が完了した。現在はBMWグループの一員として、独自のアイデンティティを保ちながら新たな展開を模索している。
5月15日に初公開、コンセプトカーの詳細が明らかに
アルピナの新たな挑戦が、5月15日からイタリア・コモ湖畔で開催される「コンチェルソ・デレガンツァ・ヴィラ・デステ」で始まる。この prestigious なイベントで、アルピナ初となるコンセプトカーが世界初公開される予定だ。同車は、既に廃止されたBMW 8シリーズグランクーペモデルである。
全長191インチ(約485cm)、ホイールベース118インチ(約300cm)という大型サイズながら、アルピナらしい洗練されたデザインが特徴だ。外観は過度なエアロパーツや派手なカラーリングを排し、むしろ「アイコニックな要素」を追求している。具体的には、極端なシャークノーズと凹型フルワイドエアダム、バックライト付きVシェイプのボディカラーキドニー、超スリムなL字型テールライト、再解釈された20スポークアルロイホイール、角張ったフェンダー、そしてBMW 7シリーズやX7にも採用された「スタックヘッドランプ」の小型版といった、新たなデザイン言語が投入されている。
伝統と革新の融合、アルピナのDNAを継承
アルピナの歴史は、BMWをベースにした高性能モデルで知られており、B10、B12、B3、B5といったモデルは、ベース車を凌駕するパフォーマンスと洗練された内装で名を馳せた。創業者のブルクハルト・ボーベンジーペン氏とその息子たちは、BMW M部門との棲み分けを意図的に図り、独自の市場を確立してきた。
今回発表されるコンセプトカーにも、その伝統が色濃く反映されている。内装には、アルピナ伝統のラバリーヌレザーとスエードが壁から壁まで張り巡らされ、間接照明やアルピナブルー、アルピナグリーンのアクセントカラーが随所にちりばめられている。さらに、デジタルメーターや充電ステータス表示にも同社の伝統カラーが採用されている。
運転席に座ると、ギアセレクターをDレンジに入れると「アルピナ」のロゴと雪を頂いた山のピクトグラムが一時的に表示される。リアウインドウとルーフは一体型の曲面ガラスで構成され、後席には冷蔵庫付きセンターコンソールが備わる。このコンソールはスローモーションで展開され、磁石で固定されたクリスタルグラスが現れる仕組みだ。
「このクルマには悪い席などありません。このメッセージは、今後発表される全てのアルピナ車に当てはまるでしょう。伝統を尊重しつつ、空間、スタイル、快適性、利便性、クラス、そして職人技に新たな解釈を加えること。それが私たちの使命です」
マックス・ミスニ(アルピナチーフデザイナー)
今後の展望:コンセプトカーの行方は?
一方で、今回のコンセプトカーが市販化される可能性は現時点では低いとの見方が強い。ベースとなった8シリーズグランクーペは既に生産終了しており、代替となる適切なプラットフォームが見当たらないためだ。しかし、アルピナはこのコンセプトカーを通じて、ブランドの新たな方向性とデザイン哲学をアピールする意図があるとみられる。
BMWグループの一員として、アルピナは今後も独自のアイデンティティを保ちながら、高級スポーツカー市場での存在感を高めていくことだろう。5月15日のデビューに注目が集まる。