米国保健福祉省(HHS)のロバート・F・ケネディ・ジュニア長官が、政策立案者から「健康インフルエンサー」へと転身しつつある。2026年4月18日に行われたホワイトハウスでの向精神薬に関する発表会見で、ケネディ長官はドナルド・トランプ大統領の背後に立ち、ポッドキャスターのジョー・ローガンと並んで写っていた。写真:アリソン・ロバート/ワシントン・ポスト/ブルームバーグ via ゲッティ・イメージズ
ケネディ長官は、HHS長官としての新たな段階に入った。先週発表された2つの動きが、その変化を象徴している。まず、自身のポッドキャスト「The Secretary Kennedy Podcast」を立ち上げ、初回エピソードでは米国の食料供給システム改革に焦点を当てた。次に、トランプ大統領がCDC(疾病対策センター)の新トップに、保守的な公衆衛生官僚であるエリカ・シュワルツ博士を指名したことだ。
政策からの遠ざかり、メディアへのシフト
これらの動きは一見矛盾しているように見えるが、ケネディ長官の新たな役割を示唆している。CDC改革は、ケネディ長官が医療機関を解体すると公約していた際の最優先課題だった。しかし、就任1年でCDCからは数百人の職員が解雇され、4人の局長が短期間で交代するなど、同機関は危機的状況に陥っている。そんな中、シュワルツ博士の指名により、ケネディ長官の政策立案の影響力はさらに低下する見通しだ。
ケネディ長官はもはや政策の中心ではなく、むしろ「健康インフルエンサーのトップ」としての役割を担うことになる。巨大なメディアプラットフォームを持ちながら、かつて目指していた政策決定権は失われつつある。ホワイトハウスはケネディ長官を公の場から完全に排除するつもりはない。なぜなら、共和党は2026年の中間選挙で「Make America Healthy Again(米国を再び健康に)」を掲げる有権者の支持を必要としているからだ。
農薬規制や医薬品政策での挫折
ケネディ長官が長年取り組んできた農薬問題でも、その立場は弱まっている。トランプ大統領は、ケネディ長官が健康被害の可能性を指摘していた除草剤グリホサートの使用拡大を決定した。過去1年間、ケネディ長官は環境保護庁(EPA)のリー・ゼルディン長官との対立を繰り広げてきたが、ゼルディン長官はバイデン政権下で導入された環境規制の多くを撤回し、企業寄りの政策を推進している。
また、ケネディ長官の乳児用粉ミルク改革案は業界からの反対で縮小され、抗うつ薬やスタチン系薬剤の規制強化も実現していない。米食品医薬品局(FDA)が当初拒否していたある政策も、その後の見直しが進んでいないとウォールストリート・ジャーナルは報じている。
「ケネディ長官は、かつてのような政策の主導権を失いつつある。しかし、メディアを通じた影響力はむしろ強まっている。これは、トランプ政権が彼をコントロール下に置きながらも、公の場から完全に排除しない戦略の一環だ」と政治アナリストは指摘する。
選挙戦略との関連性
共和党は中間選挙に向け、ケネディ長官の「健康インフルエンサー」としての役割を活用しようとしている。彼のポッドキャストやメディア露出は、保守層の支持獲得につながる可能性がある。一方で、政策面では徐々に影響力を失わせるという、微妙なバランスが取られている。
ケネディ長官自身は、自身のポッドキャストで「米国の健康システムを根本から変える」と語っており、その発言は依然として大きな注目を集めている。しかし、実際の政策決定の場では、その発言力は限定的なものとなっている。