スイスのチョコレートブランド「キットカット」が、新たな商品を発売した。しかし、その正体はチョコレートバーではなく、携帯電話の電波を完全に遮断する「ファラデーケージ」機能を備えた特殊な包装だった。商品名は「Break Mode(ブレイクモード)」。パナマのキットカットと広告代理店オグルヴィコロンビアのコラボレーションにより実現したこの斬新なアイデアは、デジタルデトックスを求める現代人のニーズに着目したマーケティング戦略の一環だ。

「Break Mode」は、巨大なキットカットの包装紙を模した外観ながら、内部には複数の導電性素材(主に銅)とポリエステル層を組み合わせた多層構造を採用。これにより、携帯電話を内部に収納すると、電話・インターネット・Bluetooth・GPSなどの電波が完全に遮断されるファラデーケージとして機能する。ガストン・ポタス(オグルヴィアンドゥーナ最高クリエイティブ責任者)氏は、この技術について「外側のポリプロピレン層が構造を保護し、耐久性と実用性を確保している」と説明する。

「Take a Break」のメッセージを具現化

キットカットの象徴的なスローガン「Take a Break(一休みしよう)」を現実のものとするために開発された「Break Mode」。同社は、常にオンライン状態の現代社会において、ブランドが「休息」という約束をどのように実現できるかを問いかけた。オグルヴィのInstagramで公開されたキャンペーン動画では、「常に接続された世界で、ブランドの『休息』という約束を現実のものにするには?」と訴求している。

ポタス氏は、商業的な実用性については「現在評価中」と述べるにとどめたが、このキャンペーンが示すのは、ブランドがデジタルデトックスへの関心の高まりをマーケティング機会と捉えているという事実だ。皮肉なことに、この商品は、人々がスクロールし続ける「ドゥームスクロール」中に目にする可能性が高いという点も注目に値する。

デジタル断ちのニーズが生んだブランド戦略

近年、スマートフォンやソーシャルメディアへの依存が深まる中、消費者は「ダムフォン(機能を制限した携帯電話)」や「電話ブロック」など、デジタルデトックスを促す製品を求めるようになった。この「アプスティネンス運動」の流れを受け、個人クリエイターによる斬新なソリューションも登場している。例えば、ローガン・アイビーの6ポンドの携帯電話ケースや、ハンク・グリーンの「センセーショナル・ビーンズ」アプリ、さらにはリース・ケンティッシュの「草に触れるまでTikTokをスクロールできない」アプリなどがその一例だ。

マーケターがデジタルトレンドの変化に迅速に対応することが求められる中、ブランドが独自のデジタルデトックスツールを開発するのは時間の問題だった。実際、昨年10月にはイケアが「青い光を避けて寝るための平積みベッド」を発売し、話題を集めた。キットカットの「Break Mode」も同様のコンセプトながら、より高度な技術を活用したソリューションと言える。

実証実験:テックイベントで披露

「Break Mode」の実用性は、パナマで開催された大規模テックイベント「Expo Tech」、コンサート、地元大学などで実際に披露された。オグルヴィは各会場でデモンストレーションを行い、Instagramのキャンペーン動画にその様子を収めた。参加者は、携帯電話を「Break Mode」に入れると、電波が完全に遮断される様子を目の当たりにしたという。

ポタス氏は、「この技術が消費者にどのように受け入れられるか、現在評価中」と述べるにとどめたが、デジタルデトックスへの関心が高まる現代において、ブランドが新たな価値を提供しようとしていることは明らかだ。今後、このような「デジタル断ち」ツールが一般化するのか、注目が集まる。