米バイオテック企業のキルベルナ・セラピューティクスは、希少な神経自己免疫疾患「スティッフパーソン症候群(SPS)」患者を対象とした、初の個別化CAR-T細胞療法の臨床試験で、運動機能の改善と障害の軽減を確認したと発表した。
同社は、2024年半ばまでに米食品医薬品局(FDA)へ治療薬の承認申請を行う計画で、承認されればSPSに対する初の治療薬、さらに自己免疫疾患向けの初の個別化CAR-T療法として市場に登場する見込みだ。
現状、CAR-T療法は血液がんに対する治療としてのみ承認されているが、遺伝子改変T細胞を用いてB細胞を枯渇させる(実質的に患者の免疫システムをリセットする)手法が、自己免疫疾患への応用に注目を集めている。複数のバイオテック企業が、血液がん以外の疾患へのCAR-T療法開発にシフトしつつある。
スティッフパーソン症候群とは
スティッフパーソン症候群は、筋肉の硬直とけいれんを主症状とする、進行性の神経疾患。自己免疫機構の異常により、GABA産生ニューロンが攻撃されることで発症すると考えられている。発症率は100万人に1人程度と極めて稀な疾患で、診断までに平均5年以上かかるケースも多い。現在の治療法は免疫抑制剤や筋弛緩剤が中心だが、根本的な治療法は存在しない。
CAR-T療法の新たな可能性
CAR-T療法は、患者自身のT細胞を遺伝子改変してがん細胞を攻撃する治療法として知られるが、自己免疫疾患への応用が注目を集めている。B細胞を標的としたCAR-T療法は、免疫システムの過剰反応を抑制することで、多発性硬化症や全身性エリテマトーデス(SLE)などの治療につながる可能性がある。
キルベルナの今回の発表は、CAR-T療法が血液がん以外の疾患にも有効である可能性を示す重要なマイルストーンとなる。同社は、2023年にも複数の自己免疫疾患向けCAR-T療法の開発を進めていることを明らかにしており、今後数年間で自己免疫疾患治療のパラダイムシフトが起こる可能性がある。
「CAR-T療法は、これまで治療法がなかった自己免疫疾患に対する新たな希望となる可能性があります。スティッフパーソン症候群はその代表例です」
— キルベルナ・セラピューティクス CEO