医療費未払い訴訟の実態に迫る
医療費の未払いを理由に病院や医師、歯科医などの医療機関が患者を訴えるケースはどれほどあるのか。米国の医療費負債問題の実態を追うKFF Health Newsの調査プロジェクト「Diagnosis: Debt」が、その実態を明らかにした。
コネチカット州の裁判所データが示す驚きの事実
KFF Health Newsは2022年から全米の報道機関と協力し、医療費負債の規模と影響を調査している。米国では約1億人の成人が医療費負債を抱えているとされるが、多くの州では患者が医療費を理由に裁判所に訴えられるケースの実態把握が困難だ。そんな中、コネチカット州の裁判所データは例外的に詳細な分析が可能だった。
同州のデータを分析した結果、医療費請求訴訟の80%以上が病院ではなく、医師、歯科医、その他の医療機関によって行われていることが判明した。これは5年前と比較して大きな変化だ。当時は医療費関連の訴訟の75%が病院によるものだったが、現在ではその立場が逆転している。
非病院系医療機関の法的規制の緩さが問題に
病院は非営利団体であることが多く、低所得患者への経済支援を提供する義務があり、過剰な回収活動を制限する連邦規制の対象となっている。一方で、民間の医師グループや歯科医などはこうした規制の対象外だ。
その結果、医療費未払いを理由とした訴訟は規制の少ない領域で行われるようになり、患者にとっては深刻な影響を及ぼしている。具体的には、賃金の差し押さえ、住宅への抵当権設定、利息や裁判費用によるさらなる負債の増加などが挙げられる。
患者の生活を脅かす医療費負債
医療費負債は、経済的に困窮する家庭にさらなる負担を強いるだけでなく、必要な医療を受ける機会を奪い、医療機関への信頼を損なう要因ともなっている。
「こんなことが本当に許されるのか」。コネチカット州ブリストルで看護師を務めるアリー・キャス=ウィルソンさんは、かつて通院していた産婦人科医院から1,972ドルの未払いを理由に訴えられた。彼女は訴訟に異議を唱えず、敗訴した。それでも彼女は疑問を呈する。「医療機関が患者に対してそんなことをするなんて、どう考えたらいいのでしょうか」
調査の背景と今後の展望
KFF Health Newsは、医療費負債問題の実態を明らかにするため、全米の報道機関と協力し、各州の裁判所データを分析している。コネチカット州の事例は、医療費負債問題の深刻さを象徴するものだ。
今後も同プロジェクトでは、医療費負債が患者や医療機関に与える影響について、さらなる調査と報道を続けていく予定だ。
「Diagnosis: Debt」プロジェクトについて
KFF Health Newsは、健康問題に関する深掘りジャーナリズムを展開する米国の報道機関。KFF(非営利の健康政策研究・調査機関)の主要事業の一つとして運営されている。