暗号資産(暗号資産)界の大物で、トランプ前米大統領との関係が注目されるジャスティン・サン氏が、トランプ氏のビジネスパートナーが経営する企業に対し、法的手段に打って出た。米国時間10月8日、サン氏はワールド・リバティ・ファイナンシャル(World Liberty Financial、以下WLF)の幹部らを相手取り、詐欺、横領、その他の犯罪行為で訴訟を提起した。
訴状は、WLFを「崩壊と破産の危機に瀕する経営難の企業」と位置付け、同社の共同創業者であるチェイス・ハーロ氏を「常習的な詐欺師で脱税者」と断じるなど、通常の法的文書とは一線を画す過激な表現で埋め尽くされている。同訴訟には、既に報道された内容も含まれる一方で、WLFの経営破綻の可能性を示唆するなど、憶測に基づく主張も含まれている。
WLF側の反応と投資家・政治家の反応
WLF側は10月9日、同社の広報担当者を通じてコメントを発表。CEOのザック・ウィトコフ氏は、サン氏の訴訟を「自身の不正行為から注目を逸らすための desperate な試み」と切り捨てた。一方、ハーロ氏は直接的な反論を避け、ラドヤード・キップリングの詩を引用した上で、ウィトコフ氏の声明を共有し、「建設的な取り組みは常に困難を伴い、成功と失敗が混在する迷路のような道のりだ」と述べた。
同訴訟は、怒りを募らせる投資家や反対勢力の政治家らからも注目を集めており、WLFに対する批判勢力にさらなる火種を提供する可能性が高い。
52ページの訴状に記載された4つの注目すべき主張
1. ハーロ氏の過去のスキャンダル
ハーロ氏の経歴は、メディアでたびたび取り上げられてきた。過去には服役歴や差別的発言、疑わしいビジネス慣行、さらには2024年に発生したDeFiプロトコルのハッキングによる暗号資産のほぼ全損など、数々のスキャンダルが報じられている。
サン氏の訴状には、これらの既知の事実に加え、新たな主張も含まれている。例えば、2010年頃に「ChaseHeroScam.com」というウェブサイトが立ち上がり、ハーロ氏の顧客やパートナーから非難の声が上がっていたと主張。同サイトは10月10日現在、アクセスできない状態だが、訴状で引用された投稿の確認はできていない。また、ハーロ氏がフロリダ州の不動産に対して4度の税金滞納処分と差押えを受けていたことも明らかにされている。
さらに、ハーロ氏が「エプスタイン島」として知られるジェフリー・エプスタイン氏の私有島、リトル・セント・ジェームズ島を訪れたことを「公然と自慢していた」との主張もあるが、証拠は提示されていない。
2. 投資家を無視した「秘密の」システムアップグレード
WLFのガバナンストークン「WLFI」保有者は、当初から同社の運営に関与する権利がほとんど与えられていなかった。しかし、同社の基盤技術に対するアップグレード案については投票権が与えられていた。
サン氏は、WLF幹部が昨年、ガバナンス投票や保有者への開示なしに、2度のアップグレードを「独断で」実施したと主張。これにより、WLFはWLFIトークンの凍結・没収権を獲得し、実際にサン氏に対して行使したと主張する。サン氏はこのアップグレードを「技術的には公開ブロックチェーン上で確認できるが、WLFはコード内に埋め込むことで隠蔽した」と表現し、その手法を非難している。
3. WLFの財務状況に関する主張
訴状では、WLFが「資金不足と経営破綻の瀬戸際にある」と主張。具体的には、WLFが保有する暗号資産の大半が「流動性の低い、価値のないアルトコイン」で構成されており、同社の財務基盤が脆弱であると指摘している。また、WLFがサン氏に対して「数百万ドル規模の債務を負っている」とも主張している。
4. トランプ氏との関係を巡る攻防
サン氏は、トランプ前大統領との関係を重視しており、WLFとの関係悪化を避けるために同社に出資していたと主張。しかし、WLF側がサン氏の提案を拒否し、独自の方針を推し進めたことで、両者の関係が悪化したと訴状では述べられている。
一方で、WLF側はサン氏の主張を「事実無根」とし、同社のビジョンや事業計画の正当性を強調している。今後、両者の主張の真偽が法廷で明らかになる見通しだ。
今後の展開と業界への影響
この訴訟は、暗号資産業界におけるガバナンスのあり方や、投資家保護の観点からも注目を集めている。特に、WLFI保有者をはじめとする投資家にとって、同社の経営状況やシステムの透明性が大きな関心事となっている。
また、トランプ氏との関係が注目されるサン氏の動向は、政治と暗号資産業界の接点としても議論を呼ぶだろう。今後、両者の法廷闘争がどのように展開するのか、業界関係者からも注目が集まっている。