米国の主要汚染施設、メール一通で大気規制免除に
米国の主要な汚染施設180カ所以上が、2025年3月にトランプ政権下で行われた「クリーン・エア・アクト」の重要条項免除措置により、大気汚染規制から事実上解放された。申請はメール一通で可能で、審査は簡易だったとされる。
米国の環境保護庁(EPA)はこの措置を「米国史上最大の規制緩和」と位置づけているが、専門家らは健康被害の拡大を懸念。早期死亡リスクの増加や周辺住民への健康被害が懸念される。
免除申請はメール一通、審査は簡易に
トランプ政権は2025年3月、石炭火力発電所や化学工場、製造業などに対し、クリーン・エア・アクトの重要条項からの免除を提案。申請期限は同月末までとされ、メール一通で申請すればよいとされた。審査は簡易で、科学的な検証は行われなかったという。
その結果、わずか2週間で主要産業の企業幹部らが大量の申請を送りつけ、EPAは専用メールボックスを設置。その後2週間で、少なくとも3,000ページに及ぶメールがやり取りされた。プロパブリカは公文書請求を通じてこれらのメールを入手し、分析した。
具体例:石炭廃棄物発電所、石油精製所、医療滅菌施設も免除
具体的な免除事例として、以下のような施設が承認された。
- スクラッグス・リクレイメーション社(Scrubgrass Reclamation Company)
ペンシルベニア州西部の石炭廃棄物発電所を運営。同社のリチャード・シェファー資産管理者は、同発電所が「米国の安全保障に不可欠」と主張し、免除を申請。11日後に大統領布告により承認された。同発電所の電力の大部分は、ビットコインのマイニングに使用されている。 - シトロ社(Citgo Petroleum Corporation)
イリノイ州、ルイジアナ州、テキサス州の3カ所の石油精製所について、近年クリーン・エア・アクト違反を受けていた同社のアン・アルバヒッシュ弁護士が免除を申請。EPAはかつて、この規制が「化学工場周辺の数十万人の健康を守る重要な保護を提供する」と結論づけていたが、承認された。 - ステリジェニクス社(Sterigenics)
発がん性物質である酸化エチレンを排出する医療滅菌施設9カ所(ユタ州ソルトレイクシティ、カリフォルニア州ロサンゼルス、ノースカロライナ州シャーロット、ジョージア州アトランタなど)について、同社のケビン・ワグナー副社長が免除を申請。連邦データによると、これら施設の1マイル圏内には4万5千人以上が暮らしており、その大半は非白人だった。7月の大統領布告により、全ての申請が承認された。
これらの企業はプロパブリカの取材に対し、コメントを拒否した。
科学的検証なし、前例のない権限行使
今回の免除措置では、ホワイトハウスがEPAの科学者に意見を求めることはなかった。また、クリーン・エア・アクトの権限行使として、これまでに前例のない解釈が用いられたという。
最終的に、38州にまたがる180カ所以上の施設が免除されたとされる。環境規制の緩和により、企業はコスト削減を実現したが、その一方で数百万人の米国人が呼吸する空気の質の悪化が懸念される。
「今回の措置は、環境規制の歴史的な後退であり、公衆衛生に対する重大な脅威となる可能性がある。特に、すでに汚染が深刻な地域の住民にとっては深刻な影響が懸念される。」
環境保護団体関係者
今後の展望と懸念
専門家らは、今回の免除措置が長期的な環境・健康被害をもたらす可能性を指摘。特に、大気汚染による早期死亡リスクの増加や、子どもや高齢者への健康被害の拡大が懸念されている。
一方で、企業側はコスト削減による経済的メリットを強調。今後、同様の措置が他の規制分野にも拡大する可能性が指摘されている。