米国の航空業界で新たな公的資金投入の動きが浮上している。トランプ前大統領が経営難に陥った格安航空会社「スピリット航空」に対し、最大5億ドル規模の公的融資を検討していると、CBSニュースが報じた。

同報道によると、この融資パッケージには、連邦政府がスピリット航空の株式を最大90%取得できる「ワラント(新株予約権)」が含まれる可能性があるという。米国民にとって、民間企業への公的資金投入自体が問題視される中、政府が経営権を握るという事態は特に不当だとの批判が強まっている。

スピリット航空の経営難は、実は回避可能だった。2022年7月、同社はライバルであるジェットブルーによる買収を発表。総額76億ドル(スピリットの負債38億ドルを含む)で、当時のCEOテッド・クリスティ氏は「米国最大手4社に対抗する低価格航空会社を創出する」と意義を強調していた。

しかし、バイデン前大統領の下で司法省は2023年3月、この合併を阻止するために提訴。その理由として、合併により「スピリット効果」(同社の参入が他社の価格引き下げを促す現象)が消滅し、結果的に航空運賃の上昇と座席数の減少につながる恐れがあると主張した。

司法省の発表によれば、これは「航空会社の合併を巡る初の司法審査」となった。当時のジェットブルーCEOロビン・ヘイズ氏は「これはペプシがコカ・コーラを買収するような話ではない。合併後も市場シェアは8~9%にとどまる」と反論したが、裁判所は司法省の主張を認め、合併を阻止した。

米国の航空市場は、デルタ、アメリカン、サウスウエスト、ユナイテッドの4社が国内線の67%以上を占める寡占状態にある(運輸統計局調べ)。スピリットとジェットブルーを合わせても、最大手1社の半分にも満たないシェアにとどまる。このため、司法省は「消費者への悪影響を最小化する」との名目で合併を阻止したが、結果的にスピリットは経営難に陥り、今やトランプ氏による公的救済が検討される事態となっている。

米国の航空業界専門家は「バイデン政権の判断がスピリットを窮地に追い込み、今やトランプ氏がそのツケを納税者に押し付けようとしている」と批判している。

出典: Reason