カンヌ国際映画祭の「監督週間」で上映されたバルゴフ監督の英語デビュー作『バタフライ・ジャム』は、奇妙なユーモアと不気味な雰囲気が同居する作品だ。観客がこの作品を「胃にもたれる」と感じるかどうかは、まさにその独特の味わいを好むかどうかにかかっている。

物語の舞台はニュージャージーの一家が営む居酒屋。主人公アジーク(バリー・キーガン)は、奇妙な振る舞いが目立つ移民の料理人だ。彼の息子テミール(タルハ・アクドガン)は16歳で父親の死を発表するシーンから物語が始まるが、すぐにアジークが登場し、奇妙なキャラクターが物語を牽引する。

奇妙なキャラクターと不均衡な構成

アジークは、家族の居酒屋と閉鎖的なコミュニティの中で暮らす奇妙な男。彼の息子テミールはアメリカ生まれだが、アジークの年齢(33歳)とのギャップから、その背景が曖昧に描かれる。アジークの弟マラット(ハリー・メリング)や妹ザリヤ(ライリー・キーグ)もまた、奇妙なキャラクターとして描かれる。

物語の前半は、アジークが地元の名物料理「デレン」(ジャガイモ、チーズ、ハーブを詰めたパイ)をマスターし、その評判が上がる様子が描かれる。しかし、その成功は長続きせず、物語は突然暴力的な展開へと転じる。バルゴフ監督は、この作品を故郷のナリチクで構想したが、ロシアからの亡命後にニュージャージーのチェルケス人ディアスポラを舞台に再構築した。その結果、作品には所々で不整合が見られる。

父と息子の関係、それともディアスポラの物語?

『バタフライ・ジャム』は、父と息子のドラマとしても、ディアスポラの物語としても完全にはまとまっていない。むしろ、奇妙なキャラクターの個性的な研究として機能している。奇妙なユーモアと不気味な雰囲気が混在する本作は、観客の好みを大きく分けるだろう。

バルゴフ監督は、この作品を通じて、奇妙なキャラクターと不均衡な構成が織りなす独特の世界観を提示している。その味わいは、観客によって受け止め方が大きく異なるだろう。

出典: The Wrap