2024年5月、ディズニーの「プラダを着た悪魔2」が、スタジオの予想を上回る7700万ドル(約115億円)の初週末興行収入を記録し、注目を集めた。この成功は、単なるレガシー続編の勝利にとどまらず、スタジオの戦略転換の兆しを示している。

同作は、公開3日間で7700万ドルを記録し、事前の予測額(6500万ドル~7500万ドル)を上回った。さらに、2006年に公開されたオリジナル作の初週末興行収入2750万ドルと比較しても、実に3倍近い数字となった。20年間のインフレを考慮しても、この数字は特筆すべきものだ。グローバルでは初週末に2億3360万ドル(約350億円)を記録し、今年の世界興行ランキングで2位にランクイン。これは「スーパーマリオブラザーズ MOVIE」(3億7250万ドル)に次ぐ成績であり、同月に公開された「マイケル」(2億1900万ドル)や「プロジェクト・ヘイル・メアリー」(1億4100万ドル)を大きく上回る結果となった。

国内(北米)では、マイケルとプロジェクト・ヘイル・メアリーが初週末の興行収入で上回ったものの、世界的には「プラダを着た悪魔2」が圧倒的な存在感を示した。

スタジオ戦略の転換とフランチャイズの再構築

この成功は、ディズニーにとっても大きな意味を持つ。同社は、かつて20世紀フォックスが保有していたフランチャイズを現代に蘇らせる戦略を推進しており、その一環として「プラダを着た悪魔2」が位置づけられている。実際、ディズニーは過去数年間で「エイリアン: ロミュラス」「プレデター: バッドランド」「キングダム・オブ・ザ・プラネット・オブ・ザ・エイプス」など、フォックスのフランチャイズを再構築し、成功を収めてきた。

さらに、同作の成功は、ディズニーにとって2025年5月にマーベル映画が公開されなかったことと無関係ではない。通常であれば、マーベル映画が5月に公開されていたはずだが、同スタジオは年末に控えた「アベンジャーズ」シリーズの強化に向けて、一時的にラインナップを整理していた。実際、2025年5月に公開されたマーベル映画「サンダーボルツ*」は7430万ドルの興行収入を記録し、予算規模は大きかったものの、同作を上回る結果とはならなかった。

これは、マーベルの力を否定するものではない。むしろ、同スタジオが年末の「アベンジャーズ」に向けて戦略的な調整を行っていたことを示すものだ。しかし、「プラダを着た悪魔2」の成功は、単にノスタルジアの価値を示すだけではない。2000年代の文化的な象徴が再評価される中で、成人層や女性層をターゲットとしたコメディ映画が、スタジオのリスク回避傾向を打ち破る可能性を示したのだ。

時代を超えた興行力と新たな観客層の台頭

「プラダを着た悪魔2」の特筆すべき点は、主要キャストの年齢層だ。同作の主要キャストは全員40歳以上であり、これは若年層をターゲットとしたアクション映画とは対照的な戦略と言える。また、同作は、スタジオがこれまで敬遠してきた成人層や女性層をターゲットとしたコメディ映画でありながら、見事な興行成績を収めた。

この成功は、スタジオが観客の多様化に対応し、新たなジャンルへの投資を拡大するきっかけとなるだろう。これまで、若年男性層を中心としたアクション映画が主流であった興行市場において、「プラダを着た悪魔2」は、成熟した観客層や女性層をターゲットとしたコンテンツが十分に通用することを証明したのだ。

「プラダを着た悪魔2」の成功は、単なるレガシー続編の勝利ではなく、スタジオの戦略転換と観客層の多様化を象徴する出来事だ。

今後、この成功が他のスタジオにも波及し、成熟した観客層や女性層をターゲットとしたコンテンツが増加することが期待される。また、ディズニーにとっても、フォックスのフランチャイズを再構築する戦略の正しさが証明された形となった。