カジノの常識として「胴元が必ず勝つ」という言葉がある。しかし、近年注目を集める予測市場(Kalshiやポリーマーケットなど)では、状況が少し異なるように見えるが、本質的には同じ構造が存在する。胴元ではなく、ごく少数の熟練トレーダーが利益を総取りし、その他の一般ユーザーはその損失を支えているのだ。
ロンドンビジネススクールとイェール大学の研究者らによる新たな論文によると、予測市場は上位3.14%のユーザーによって支配されているという。例えば、月間アクティブユーザー70万人のポリーマーケットでは、わずか2万1000人の熟練トレーダーが利益を得ている計算になる。
研究チームは137億6000万ドル相当の170万件の取引を分析。その結果、一般ユーザーの大半はコイントスと同等か、それより悪い成績に終わり、実質的に資金を失っていることがわかった。研究者らはこう指摘する。「これらのアカウントは取引高の大半を占めるが、価格精度の向上には寄与していない。つまり、予測市場の精度は『群衆の知恵』ではなく、『情報を持つ少数派の知恵』に過ぎないのだ」
利益の30%をわずか3%のユーザーが独占
分析対象となった170万件の取引のうち、ランダムな確率を上回る予測精度を示したのは、わずか3.14%のユーザーだった。彼らは利用可能な利益の30%以上を手にし、その一方で2/3以上のプレイヤーが実質的な敗者となり、資金を熟練トレーダーに流していた。
この研究は「ギャンブルはカモのゲーム」という当たり前の事実を再確認させる一方で、『群衆の知恵』という神話を打ち砕くものでもある。同神話は、多数の人々が知識を共有することで正確な予測が可能になるという考えだが、実際には群衆は少数の熟練トレーダーを支える資金源に過ぎないのだ。中には内部情報を持つトレーダーも含まれている可能性が高い。
予測市場の裏側で起きていること
この研究結果は、予測市場が「誰でも勝てる公平な場」というイメージとは程遠い現実を浮き彫りにしている。一般ユーザーが利益を得るには、熟練トレーダーと同じレベルの情報収集力と分析力が必要不可欠だが、現実的にはほとんどの人がその域に達することはできない。
予測市場に参加する際は、この構造を理解した上でリスクを判断することが重要だ。多くの人が「群衆の知恵」に期待するが、実際には「少数のプロ」が利益を総取りする構造が存在することを肝に銘じておこう。