炭素除去市場をけん引してきたマイクロソフト

米マイクロソフトが炭素除去サービスの新規購入を一時停止する方針を示したことで、まだ発展途上の炭素除去産業に大きな動揺が広がっている。同社は2025会計年度だけで世界21社と契約し、過去最高の4500万トンのCO2除去を達成していた。

具体的な契約先には、アマゾン熱帯雨林の再生に取り組むRe.greenや、有機廃棄物を埋設して炭素を除去するVaulted、中西部の農業廃棄物からバイオ炭を製造するLiferaftなどが含まれていた。これらのプロジェクトは、CO2排出量の削減と並行して、すでに大気中に存在するCO2を恒久的に除去する技術に焦点を当てている。

「恒久的」除去に注力する同社の戦略

マイクロソフトは昨年、世界の「耐久性のある」炭素除去クレジット購入の約90%を占め、そのほとんどがCO2をほぼ永久的に固定するプロジェクトだった。例えばVaultedの埋設方式は、森林再生のように山火事や樹木の枯死で炭素が再放出されるリスクが低いため、同社はこうした技術に重点を置いてきた。

すでに締結された契約は継続されるものの、新規参入を目指すスタートアップにとっては、業界最大の買い手であるマイクロソフトの動向が不透明なだけに、今後の展望が見えにくくなっている。

2030年の目標達成に向けた課題

同社のサステナビリティ責任者であるメラニー・ナカガワ氏は声明で、「私たちの脱炭素化アプローチは、排出削減、除去、効率化を組み合わせたものであり、炭素除去はその重要な要素の一つです。時には、サステナビリティ目標に向けた取り組みをさらに洗練させるために、除去調達のペースや規模を調整することもあります」と述べた。

業界関係者の間では、マイクロソフトがすでに2030年までのカーボンネガティブ目標(排出量を上回るCO2除去)を達成するための十分な契約を締結済みとする見方もある。しかし、データセンターの急増に伴う排出量増加が目標達成を難しくしており、今後新規契約を開始しても2030年までに効果を発揮するのは困難との指摘もある。

「2030年はわずか4年後です。炭素除去プロジェクトを立ち上げ、マイクロソフトのような大企業の炭素予算に実質的な貢献を果たすのは非常に難しいのです」
アンドリュー・シェベア(カーボン除去に特化したVCファンドCounteractパートナー)

業界の将来に不安広がる

一部の企業はマイクロソフトから直接一時停止の通知を受けていないとし、一時的な措置にとどまる可能性を示唆する声もある。しかし、報道を受けて資金調達の必要性についての議論が加速している。

炭素除去産業は長期的に見て、マイクロソフトだけに依存する状況が続かないことは認識していた。カーボンビジネス評議会のベン・ルービン事務局長は次のように指摘する。

「業界全体のコンセンサスは、『市場はより多様なプレーヤーによって支えられる必要がある』というものでした。数社だけに依存する状況は望ましくありません」

マイクロソフトの規模ゆえに業界をけん引してきた同社の動向は、今後も炭素除去産業の行方を左右する重要な要素となるだろう。