世界の電力システムが化石燃料への依存を徐々に減らしつつあることが、最新の分析で明らかになった。英シンクタンク「エンバー(Ember)」の2025年電力レビューによると、2025年には世界の電力需要の増加分を再生可能エネルギーが全て賄うという、コロナ禍以降初めての快挙を達成した。

エンバーは英国に本拠を置く独立系シンクタンクで、過去数年にわたりエネルギー転換の動向を追跡してきた。同団体のエネルギー戦略アナリストであるキングスミル・ボンド氏は昨年、ポッドキャストに出演し、電化技術の台頭と中国を中心とした産業変革について解説した。同団体のデータは、太陽光発電や蓄電池の急速な普及、そしてクリーンエネルギーが化石燃料に取って代わる過程を解明する上で中心的な役割を果たしてきた。

太陽光発電の圧倒的な成長が鍵を握る

エンバーの2025年電力レビューの主執筆者であり、シニアエネルギー・気候データアナリストのニコラス・ファルガム氏は、太陽光発電の「圧倒的な成長」が今年の最大の特徴だと指摘する。

「太陽光発電が記録を更新するのは、もはや珍しいことではありません。しかし、毎年その規模と成長量がさらに拡大している点が注目に値します」と語るファルガム氏。同レビューによると、2025年の世界の電力需要増加分(約157テラワット時)は全て太陽光発電によって賄われた。これは、化石燃料による発電量が減少に転じたことを示す重要な転換点だ。

地域間で異なるエネルギー転換のペース

ファルガム氏は、カリフォルニアや西欧諸国で見られるエネルギー転換の動きが、東南アジアなど他地域でも同様に進んでいるかどうかについても言及した。同氏によると、再生可能エネルギーの普及ペースは地域によって差があるものの、太陽光発電のコスト低下と技術革新が世界的な追い風となっているという。

「特にアジア地域では、太陽光発電の導入が急速に進んでいます。中国をはじめとする国々では、政府の支援策や民間企業の投資が後押しとなり、再生可能エネルギーの導入が加速しています」とファルガム氏は説明する。

2026年以降の展望:地政学的リスクが与える影響

一方で、ファルガム氏は地政学的なリスクが2026年以降のエネルギー需給に与える影響についても懸念を示す。特にイラン情勢の緊迫化は、中東地域のエネルギー市場に波及し、化石燃料価格の変動や供給不安を引き起こす可能性があるという。

「イラン情勢がエネルギー市場に与える影響は計り知れません。特に欧州諸国では、ロシアからの天然ガス依存からの脱却が進む中、代替エネルギーの確保が急務となっています」と同氏は指摘する。

今後の課題と展望

エンバーの報告書は、再生可能エネルギーの普及が加速する一方で、電力網の安定性や蓄電技術の向上が引き続き課題であると指摘する。特に、風力発電や太陽光発電などの変動性再生可能エネルギーの導入が進む中、電力需給のバランスをいかに維持するかが重要なポイントとなる。

ファルガム氏は、「再生可能エネルギーの普及は、もはや止めることのできない流れです。今後は、いかに効率的に電力を供給し、安定したエネルギーシステムを構築していくかが、世界共通の課題となるでしょう」と語った。