上院共和党は7月10日、米国の移民取り締まり強化とトランプ前大統領のホワイトハウス内に新設される舞踏室の予算を盛り込んだ包括的な法案を発表した。同法案は総額約720億ドルに上り、その全額が借金で賄われる見通しであることが、議会予算局(CBO)の分析で明らかになった。
CBOによると、このうち380億ドルがICE(移民・関税執行局)に、260億ドルがCBP(税関・国境警備局)の各種プログラムに充当される。特にCBP向けの191億ドルは、国境警備隊員や職員、支援スタッフの採用・給与・訓練・装備に充てられる。さらに35億ドルが国境の審査強化に使われる。
この法案は、民主党の反対を回避するために「和解手続き( reconciliation )」と呼ばれる特別な手続きを用いて提出された。和解手続きは本来、歳出削減を目的とした1975年の法律に基づくものだが、通常のルールでは歳出増加に対しては他の分野での削減が求められる。しかし今回のケースでは、追加歳出を借金で賄う形で提出されており、議会の財政規律を揺るがす動きとして批判が集まっている。
共和党の「前例なき財政拡張」に専門家が警鐘
ウィリアム・ビーチ米議会予算局財政研究所長は、「これは前例のない動きであり、今後も繰り返される可能性が高い。多数党にほぼ無制限の歳出権限を与えることになる」と指摘した。
民主党のジェフ・マークリー上院議員(オレゴン州選出)は声明で、「和解手続きのルールに違反する条項があれば、徹底的に反対する」と述べ、共和党の手法を批判した。
カトー研究所の財政政策アナリスト、ドミニク・レット氏はメールで、「共和党は赤字拡大を容易にするために和解手続きを悪用している。この法案には歳出抑制策が全く含まれていない」と指摘した。
ホワイトハウスの舞踏室、税金負担が拡大
今回の法案には、ICEとCBPの他に10億ドルがシークレットサービスに割り当てられ、ホワイトハウス東棟の拡張工事(トランプ前大統領の舞踏室を含む)のセキュリティ強化とアップグレードに充てられる。
トランプ前大統領は当初、舞踏室プロジェクトについて「納税者の負担はゼロ」と発言し、民間からの寄付で賄うと主張していた。しかし、先週上院議員のリンジー・グラム氏(サウスカロライナ州選出)が、納税者負担が約4億ドルに上る可能性を示唆。さらに、舞踏室のコストが急増していることから、今回計上された10億ドルもすぐに不足するとの見方が強まっている。
「納税者が負担する」という表現自体も正確ではないとの指摘がある。実際には、将来の世代が借金の返済を迫られる形で間接的に負担することになるためだ。