米国籍乗客17人が帰国、隔離措置を実施

南米型ハンタウイルスの感染が確認されたクルーズ船「M/V Hondius」の乗客17人の米国籍者が、米国への帰国が開始された。米国保健社会福祉省(HHS)は5月8日、米国務省と協力し、スペイン・テネリフェ港に停泊していた同船の乗客を米国へ空輸すると発表した。帰国者はネブラスカ州オマハのオフット空軍基地に到着し、同地にある国立隔離センター(ネブラスカ大学内)で監視・治療が行われる。

感染者1人、軽症ながら隔離搬送

HHSによると、17人のうち2人はバイオ封じ込めユニットを装備した航空機で搬送された。このうち1人は南米型ハンタウイルス(アンデス株)の感染が「軽症」と確認され、もう1人は現在「軽い症状」を呈しているという。同センターは高病原性病原体への暴露者に対する隔離・治療を専門とする施設で、連邦政府が運営する。

ハンタウイルス感染症の症状と潜伏期間

CDCによると、ハンタウイルス感染症の症状は暴露後1~8週間で現れる。初期症状には倦怠感、発熱、筋肉痛(特に太もも、腰、背中、肩などの大筋群)が挙げられ、頭痛、めまい、悪寒、吐き気、嘔吐、下痢、腹痛を伴う場合もある。その後、4~10日後に咳、呼吸困難、胸部圧迫感、肺水腫などの重篤な症状が現れることがあり、これを「ハンタウイルス肺症候群(HPS)」と呼ぶ。HPSの致死率は約38%に達するとCDCは警告している。

人から人への感染リスクは?

一般的なハンタウイルスはげっ歯類から人間に感染するが、南米型(アンデス株)は人間から人間への感染が可能だ。CDCは、感染者の症状が現れるまで最大42日間の潜伏期間があると指摘。症状が現れてからが最も感染力が強いとされるが、その間に感染を広げる可能性が懸念される。一方で、CDCは5月8日付の注意喚起で、現時点では「一般市民へのリスクは低い」との見解を示している。

クルーズ船の経緯と現在の状況

「M/V Hondius」は南米型ハンタウイルスの感染が疑われる乗客を乗せ、スペイン・テネリフェに停泊していた。米国務省は同船の乗客のうち、感染が確認された者や暴露の可能性がある者を優先的に帰国させる措置を取った。帰国者はオマハの隔離センターで経過観察を受け、必要に応じて治療が行われる。

今後の対応と注意事項

  • 帰国者の健康監視:CDCとHHSは、帰国者の健康状態を継続的にモニタリングし、症状の有無を確認する。
  • 一般市民へのリスク評価:現時点では人から人への感染リスクは低いとされるが、CDCは引き続き状況を注視する。
  • 渡航者への注意喚起:ハンタウイルスの主な感染経路はげっ歯類との接触であるため、南米地域への渡航者は衛生管理に十分注意するよう呼びかけている。

「南米型ハンタウイルスはまれなケースだが、感染が確認された場合は直ちに隔離措置を取る必要がある。一般市民へのリスクは現時点では低いが、油断は禁物だ」
—— CDC疾病予防局長