妊娠中の抗うつ薬使用、子どもの発達障害リスクとの因果関係なし

大規模な国際共同研究により、妊娠前または妊娠中に選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)系抗うつ薬を使用しても、子どもの自閉症スペクトラム障害(ASD)や注意欠陥・多動性障害(ADHD)のリスクが高まるという因果関係はないことが明らかになった。

香港大学を中心とする国際研究チームは、妊娠中の抗うつ薬曝露が子どもの神経発達障害リスクに与える影響を包括的に分析。その結果、SSRI系抗うつ薬の使用とASD・ADHDの発症リスクに関連性は見られなかった。研究成果は医学誌『The Lancet Psychiatry』に5月14日付でオンライン掲載された。

遺伝的・環境的要因が関与か

研究では、抗うつ薬の使用時期(妊娠前・妊娠中)、投与量、薬剤の種類に加え、父親の抗うつ薬使用の影響も検証。その結果、母親の抗うつ薬使用と子どもの神経発達障害発症リスクのわずかな上昇が認められたものの、母親の精神疾患歴や遺伝的要因、環境因子などを考慮すると、その関連性は消失した。

研究チームは、「抗うつ薬の使用と子どもの発達障害リスクに因果関係はない」と結論付けている。米国産婦人科学会(ACOG)によると、妊娠中のうつ病有病率は約10%に上り、未治療の場合は母子双方に深刻なリスクをもたらす可能性がある。

大規模研究が解明した真実

研究チームは、主要な医学研究データベースを対象に約2,000件の研究をスクリーニングし、最終的に37件の高品質研究を分析。対象となったのは、抗うつ薬曝露のある648,000件の妊娠と、曝露のない2,500万件の妊娠に及ぶ膨大なデータだ。

研究計画は事前にPROSPERO(国際的なシステマティックレビュー登録データベース)に登録され、透明性と研究品質の向上が図られた。分析では、母親の精神疾患、家族の遺伝的要因、抗うつ薬曝露の測定方法の違いなど、さまざまな交絡因子を調整。その結果、抗うつ薬の使用と子どもの発達障害リスクに関連性は見られなかった。

専門家が指摘する抗うつ薬の重要性

米国保健福祉省ロバート・F・ケネディ・ジュニア長官は、SSRI系抗うつ薬の使用に反対を表明しているが、同薬剤は安全性と有効性が確立された治療法として広く認められている。未治療のうつ病は、母親と胎児双方に深刻なリスクをもたらす可能性があるため、バランスの取れた医療判断が求められる。

「抗うつ薬の使用と子どもの発達障害リスクに因果関係はない。むしろ、未治療のうつ病が母子双方に与えるリスクを考慮すべきだ」
—— 研究チーム

今回の研究成果は、妊娠中の抗うつ薬使用に関する誤解を解消する一助となることが期待される。

出典: Healthline