米国最高裁判所は10月30日、ジオフェンス令状(geofence warrant)の合憲性を巡る歴史的な審理を開始する。本令状は、特定の時間帯と場所を通過したスマートフォンの位置データを一括で取得できる捜査手法であり、デジタル時代のプライバシー権と捜査権限の境界が問われる。
本件「チャトリー対米国」は、2018年以降の最高裁が扱う初の主要な第四修正(不合理な捜索・押収の禁止)に関する案件となる。ジオフェンス令状は、捜査当局がGoogleなどのテック企業に対し、特定の時間帯と場所を通過したデバイスの位置履歴を一括で提出させる令状を指す。UCLA法学教授でブルッキングス研究所上級フェローのジョン・ビラセナー氏は、「数十年前であれば想像もできなかった捜査手法だ。特定のエリアを通過した全ての携帯電話のデータを取得できる」と解説する。
本件で原告側を支援するのは、保守・リベラル双方の市民的自由擁護団体であり、米政府側は法廷助言者(アミカス・キュリエ)の支持を得にくい状況にある。2019年に発生した銀行強盗事件で、捜査当局はジオフェンス令状を用いてGoogleから1時間・17.5エーカーの範囲内の位置データを取得し、容疑者を特定した。その後、Googleは位置データのクラウド保存を停止したが、原告側は本令状が財務記録や検索履歴、チャットボット記録などにも波及する可能性を指摘する。
デジタル記録の所有権を巡る議論
カトー研究所のブレント・スコループ法律フェローは、「我々はデジタル記録にも財産権が存在することを認識すべきだ。政府が令状なしでこれらの記録を取得できるならば、第四修正は空文と化し、プライバシー権は脆弱なものとなる」と主張する。一方、米政府側は「個人が第三者に開示した情報にプライバシーの合理的期待はない」と反論。2018年の「カーペンター対米国」判決では、第三者ドクトリンの適用が制限されたが、本件ではその解釈が再び問われる。
政治的・社会的影響
議会では、民主党が中絶権利との関連でジオフェンス令状の濫用を懸念する一方、共和党は2021年1月6日の連邦議会議事堂襲撃事件の容疑者追跡における同令状の利用に警戒感を示している。32州の検事総長が米政府側を支持しており、デジタル時代の捜査権限とプライバシー保護のバランスが、今後の判決で明確化される見通しだ。