公園で砂場で遊ぶ子どもたちを見守りながら、他の母親と雑談を交わす。会話の内容は決まって「子どもの睡眠スケジュール」「保育園の待機リスト」「野菜を食べるかどうか」といった日常の話題ばかり。表面的には楽しい時間でも、子どもを車に乗せて昼寝の時間に向かう頃には、その会話は忘れ去られてしまう。しかし、本当に聞きたかったのはこうだ。
「出産や産後の体験で、あなたを驚かせたことは何?」
「パートナーに理解してほしいと思うことは?」
「母親になることで、あなたの結婚生活はどう変わった?」
こうした「本音の会話」こそが、母親同士の絆を深め、経験を共有する貴重な機会となる。しかし、それを切り出すのは難しい。どこかで「重すぎる」「踏み込みすぎる」と感じてしまうからだ。
「深い会話」を促すカードゲームが登場
そんな母親たちの悩みを解決するため、新たなツールが誕生した。18ヶ月前からメディアプラットフォーム「Spread the Jelly」を運営するアムリット・ティーツとローレン・レヴィンガーは、母親同士の「本音の会話」を促すカードゲーム「The Sticky Stuff」を販売開始した。このカードは、母親たちがより早く、より深い会話を始められるようデザインされている。
「私たちの取り組みは、人々が最も messy( messy)で、最も happy(幸せ)な自分自身をさらけ出せる場を作ることです」とアムリット・ティーツは語る。同社は2024年後半に設立され、現在「The Sticky Stuff」を公式サイトで45ドルで販売している。
このカードは、エスター・ペレルの「Where Should We Begin?」や子どもとの会話を促す「Tales」、さらにはファストフードチェーンのチックフィルエーが提供する食事に関する会話カードなど、市場に出回り始めた「会話カード」の一つだ。シカゴ大学ブース・ビジネススクールのニコラス・エプリー教授は、20年にわたり会話について研究してきたが、「こうしたカードの人気は、私たちがいかに深い問題について語りたいと思っているかを示しています」と指摘する。
カードの誕生は「本音の必要性」から
「Spread the Jelly」の会話カードは、市場調査やビジネスプランから生まれたわけではない。ロサンゼルスに住む二人の女性が、誰かに話を聞いてほしいという切実な思いから始まったのだ。
アムリット・ティーツは妊娠中で、地元にママ友がいなかった。そこでソーシャルメディアを通じてローレン・レヴィンガーに連絡を取った。「ソーシャルメディアを見ると、あなたは母親として上手くやっているように見えます。会って話せませんか?」というメッセージを送ったのだ。
数ヶ月後、二人は実際に会い、正直な会話を交わした時の気持ちの良さに驚いた。そして、誰も話題にしない「母親特有の孤独感」や「産後の性生活」についても語り合った。「私たちは、コミュニティに飢えていたのだと気づきました」とローレンは振り返る。
この経験をきっかけに、二人は「Spread the Jelly」を立ち上げ、現代の母親像についてのラディカルな意見を発信するオンラインマガジンを開始した。その後、カードゲームの開発へと発展し、現在の「The Sticky Stuff」が完成したのだ。
ティーツとレヴィンガーは、まず友人や家族にカードを試してもらい、その効果を検証した。最終的に完成したカードは、4つのカテゴリー「基盤」「アイデンティティ」「帰属意識」「親密さ」に分かれており、例えば「あなたの子ども時代について説明してください」といった質問が含まれている。