高級車や中古車をトラックで輸送する際、荷主が指定した集合場所に車が届かない──。そんな「トランスポート窃盗」と呼ばれる犯罪が急増している。NBAスターのシャキール・オニールも昨年10月に被害に遭ったこの手口の実態と、専門家が勧める防犯策を解説する。
トランスポート窃盗とは?被害者になったNBAスター
高級車や中古車をトラックで輸送する際、荷主が指定した集合場所に車が届かない──。そんな「トランスポート窃盗」と呼ばれる犯罪が急増している。NBAスターのシャキール・オニールも昨年10月に被害に遭ったこの手口の実態と、専門家が勧める防犯策を解説する。
被害に遭ったのは、バスケットボールのレジェンド、シャキール・オニール氏。彼は愛車をトラックで輸送する手配をしたが、指定した集合場所にトラックも運転手も車も到着しなかった。連絡をしても荷主からの応答はなく、警察に通報したが管轄が不明で捜査は進まなかった。数十年かけて貯めた愛車が、一瞬にして消えてしまったのだ。
トランスポート窃盗の手口と被害の拡大
トランスポート窃盗とは、車の所有者やブローカーを装った犯人が、輸送中の車を横取りする犯罪手口だ。トラックの運転手が犯人に車の鍵を手渡すケースもあり、運転手自身が加害者となるわけではないが、結果的に被害に加担してしまう。
米国のトラック業界団体「アメリカン・トラックング・アソシエーション」によると、貨物窃盗(車だけでなく現金や貴重品も含む)は過去5年で1000%以上増加し、トラック業界に毎日約1800万ドル(約27億円)の損失を与えているという。
犯罪組織がこの手口を模倣し、次々と模倣犯が生まれることで被害が拡大している。カリフォルニア州を担当するハガティ社の特別捜査ユニット(SIU)の捜査官、デレック・サープ氏はこう語る。
「あるグループがこの手口を始めると、他の犯罪組織がそれを模倣し、瞬く間に複数のグループが参入します。その結果、被害が加速度的に拡大するのです」
パンデミックが拡大に拍車
特に車の輸送業界では、パンデミック以降に被害が顕著になった。2020年以降、州をまたぐオンライン取引が増加したことで、犯罪者にとって格好の獲物となったのだ。ハガティ社のエリック・ワイナー氏は、複数の防犯策を提案している。
車輸送の安全対策:専門家が勧める方法
ワイナー氏が推奨する主な対策は以下の通りだ。
- 信頼できる輸送業者を選ぶ:運転手の審査やスケジュール管理が徹底されている業者を利用する。例えば、ハガティ社の提携先「リライアブル・キャリアーズ」は、運転手の審査を厳格に行い、スケジュールを厳守することで知られる。同社を利用すると、ハガティ・ドライバーズクラブ会員は10%の割引が受けられる。
- 直接引き渡しを避ける:可能な限り、自ら車を引き取りに行くか、信頼できる第三者を介在させる。オンライン取引の増加が被害拡大の一因のため、対面での引き渡しを徹底する。
- GPS追跡システムの導入:輸送中の車にGPS追跡装置を取り付けることで、リアルタイムでの位置確認が可能になる。万が一の際も迅速な対応ができる。
- 契約書の徹底確認:輸送業者との契約書に、責任の所在や保険の適用範囲を明記させる。特に、盗難時の補償内容を確認することが重要だ。
歴史に残る大規模窃盗事件との比較
車輸送の窃盗は目新しい犯罪ではない。1978年にニューヨークのJFK空港で発生した現金・宝石の強奪事件は、当時500万ドル(現在の価値で約3000万ドル)が奪われた大規模な事件として知られる。この事件は、マーティン・スコセッシ監督の映画『グッドフェローズ』のモデルにもなったが、奪われた現金や宝石は未だに回収されていない。わずか1人の容疑者が逮捕されたのみで、犯行の全容は解明されていない。
同様に、トランスポート窃盗も巧妙化しており、犯罪組織が手口を共有することで被害が拡大している。そのため、個人レベルでの対策が不可欠だ。
まとめ:安全な車輸送のために
トランスポート窃盗は、パンデミック以降に急増した新たな犯罪手口だ。特に車の輸送業界では、オンライン取引の増加が犯罪者にとって格好の獲物となっている。そのため、信頼できる業者の選定やGPS追跡システムの導入、契約書の徹底確認など、個人レベルでの対策が求められる。
ハガティ社のエリック・ワイナー氏は、こう警鐘を鳴らす。「この手口は今後も拡大する可能性が高い。車の所有者は、輸送業者の選定に慎重を期し、万全の対策を講じるべきです」
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余談だが、先週末に開催されたNASCARのワトキンス・グレン戦では、19歳の新星コンナー・ジリッシュ選手が、最終ラップでジェシー・ラブ選手を追い抜き優勝した。同サーキットは、レース終盤のドラマが多発することで知られており、今回もその伝統を守る結果となった。