ホワイトハウスの新反テロ戦略、トランスジェンダーを「脅威」と明記
米ホワイトハウスは2024年7月、新たな「米国反テロ戦略」を発表した。これは2021年のバイデン政権下で策定された白人至上主義暴力対策を強調した文書以来のものだが、今回の文書では白人至上主義に関する言及が完全に削除された。その一方で、左派過激派やトランスジェンダーを「反米的で過激な性別観を持つ集団」として、イスラム主義者や麻薬カルテルと同等の脅威と位置づけた。
「トランスジェンダー殺害者」とのレトリック
同文書は、トランスジェンダーの人々を「暴力的左派過激派」の一員として非難し、具体例として保守系活動家チャーリー・カーク氏暗殺事件を挙げた。文書は「暴力的左派過激派によるキリスト教徒や保守派への攻撃、特にトランスジェンダー思想を掲げる過激派によるカーク氏暗殺」を強調している。
また、白人至上主義団体「ヘリテージ財団」は、FBIに対しトランスジェンダー支援活動を「暴力的過激主義」として指定するよう働きかけており、政権内の反トランスジェンダー勢力との連携が浮き彫りとなっている。
「テロリスト」とレッテル張り、政治的意図が疑われる
同戦略を主導したのは、トランプ政権下で反テロ担当大統領補佐官を務めたセバスチャン・ゴルカ氏。ゴルカ氏は記者会見で「カートル、ジハーディスト、アントファ、そしてトランスジェンダーの殺害者、ノンバイナリー、左派過激派を徹底的に排除する」と発言し、トランスジェンダーを「テロリスト」と同一視する発言を行った。
さらに、トランプ前大統領は2023年に「トランスジェンダー射手の急増」という虚偽の主張を展開しており、銃撃事件が発生するたびにこの主張が再浮上している。
民主党議員が「事実に基づかない文書」と批判
民主党のベニー・トンプソン下院議員(ミシシッピ州選出)は、同文書について「米国本土で最も深刻な暴力的脅威である右派過激主義を完全に無視している」と批判。同議員は「この文書は、大量強制送還や西半球での40回以上の違法軍事攻撃など、実績のない「成果」ばかりを並べたものだ。戦略目標や実施計画、機関間の役割分担は一切示されていない」と述べた。
反テロという用語自体が、9.11同時多発テロやアフガニスタン・イラク侵攻後に政治化された言葉であり、イスラム教徒やアラブ系アメリカ人に対する監視を正当化するために用いられてきた歴史がある。今回の文書では、その同じレトリックがトランスジェンダーの人々に向けられている。
財務長官スコット・ベッセントはカーク氏暗殺事件を「国内9.11」と呼び、ヘリテージ財団も同様にトランスジェンダーを「テロリズム」と結びつけるキャンペーンを展開。同文書は「メンバーの特定、アンチファなど国際組織との関係の把握、法執行機関による活動阻止」を掲げている。
専門家の見解:政治的意図が透けて見える
「反テロ戦略という名のもと、特定の集団を標的にすることは、米国の安全保障政策にとって危険な前例となる。特に、暴力の実態とは乖離した政治的レトリックが用いられている点が問題だ」
– 人権団体代表、匿名希望
今後の展望と懸念される影響
同文書の発表を受け、LGBTQ+団体や人権団体からは強い反発が起きている。トランスジェンダーの人々が「テロリスト」とレッテルを貼られることで、差別や暴力の助長につながることが懸念されている。また、反テロ戦略の名のもとで行われる監視や取り締まりが、特定の集団に偏る可能性も指摘されている。
一方で、民主党は同文書を「事実に基づかない政治的プロパガンダ」と位置づけ、今後も批判を強めていく構えだ。今後、米国の反テロ政策がどのような方向に進むのか、注目を集めている。