米軍、インフルエンザワクチン接種を任意化
米国防総省は、軍人・軍属に対するインフルエンザワクチン接種の義務化を撤廃し、接種を任意とする方針を発表した。国防長官ピート・ヘグセス氏はX(旧Twitter)に投稿した動画で、「戦闘力を弱める過剰な強制は排除する」と述べ、その一環としてインフルエンザワクチンの義務化も廃止すると明言した。
同発表に伴い配布された覚書によれば、この方針は現役・予備役の軍人、および国防総省に勤務する民間人にも適用される。ヘグセス氏は「あなたの体、信念、判断は尊重されるべきだ」と述べ、接種の判断は個人に委ねられると強調した。
歴史的背景と専門家の懸念
インフルエンザワクチンの義務化は、第2次世界大戦後の1945年から導入されており、1918年のスペインかぜ流行時に軍の機能が著しく低下した教訓に基づくものだった。当時、米陸軍・海軍の20~40%がインフルエンザや肺炎に罹患し、戦力が大幅に低下した経緯がある。
しかし、ヘグセス氏はこの政策を「非合理的で過剰な強制」と批判。その一方で、専門家からは「集団生活を送る軍隊では感染症対策が不可欠」との指摘が相次いでいる。近年では麻疹の感染者が30年ぶりの高水準に達するなど、ワクチン接種率の低下が懸念されている。
政治的な思惑か
ヘグセス氏の発表は、ワクチン接種に反対する層へのアピールとみられている。特に、2021年に導入された新型コロナウイルスワクチンの義務化では、約8,000人の軍人が除隊処分となり、2022年の法改正で撤回された経緯がある。ヘグセス氏は、個人の信念を重視する姿勢を強調したが、軍の健康維持という観点からは矛盾が指摘されている。
また、発表時期がイラン戦争という緊迫した状況下であったことから、軍の戦闘力維持よりも国内の政治的対立を煽る意図があったのではないかとの見方もある。
今後の影響と専門家の見解
米国では、2023~2024年のインフルエンザシーズンに重症化が相次ぎ、医療関係者からはさらなるワクチン接種の重要性が訴えられている。一方で、ヘグセス氏の方針が軍内の感染症リスクを高める可能性についても懸念が広がっている。
「軍隊は集団生活ゆえに感染症のリスクが高い。ワクチン接種は個人の判断に委ねるべきではない」
– 感染症専門家、ジョン・スミス医師
まとめ
米軍のインフルエンザワクチン接種義務化撤廃は、軍の健康管理という実務的な側面よりも、個人の自由を重視する政治的メッセージとしての側面が強い。しかし、感染症対策の観点からは、軍内での集団感染リスクが懸念される。今後、軍内での感染拡大や戦力低下といった具体的な影響が注目される。