「Short Circuit」最新号:連邦控訴裁判所の注目判決をピックアップ

米国の非営利法曹団体「Institute for Justice」が発行する週刊シリーズ「Short Circuit」の最新号が公開された。同シリーズでは、連邦控訴裁判所が下した注目判決をわかりやすく紹介している。

第四修正条項の宣誓要件廃止と令状発行基準の変化

1960年、最高裁判所は第四修正条項(不当な捜索・押収の禁止)における「宣誓または確認」要件を事実上廃止し、伝聞証拠に基づく令状発行を容認した。これにより、直接の目撃証言がなくとも令状が発布されるケースが増加。同団体は現在、この判例を覆すため、マイケル・メンデンホール氏の事案を最高裁に提訴中だ。同氏はデンバーの自宅事務所を、明らかに信頼性に乏しい第三者の伝聞情報に基づき捜索されたという。

新たな人権問題:トランスジェンダー受刑者の収容をめぐる判決

2025年、トランプ前大統領は、連邦刑務所に収容されているトランス女性受刑者のうち99%以上が男性刑務所に収容されている現状を踏まえ、全員を男性刑務所に移送する大統領令を発令。これに対し18人のトランス女性受刑者が移送差し止めの仮処分を求め提訴した。D.C.巡回区控訴裁判所は、個別の事情を考慮せずに一律に移送を命じることはできないとし、仮処分を取り消した。裁判所は、各受刑者のリスク評価を個別に行う必要性を指摘している。

ISIS関連テロ事件の逆転判決

2017年、ニューヨーク・タイムズスクエア近くの地下鉄トンネルで即席パイプ爆弾を爆発させた男性が、終身刑(フローレンス超高セキュリティ刑務所)を言い渡された事件。第二巡回区控訴裁判所は、ISISの呼びかけに触発された行為が「ISISへの物的支援」に該当しないと判断し、この容疑での有罪判決を覆した。ただし、爆発自体の罪状や量刑は維持された。反対意見では、男性がISISの支持者によるテロ行為を実行した経緯が強調された。

大統領令の手続き違反をめぐる判断

現行政権が、議会が定めた手続き(難民申請の機会付与など)を無視して、大統領布告に基づく即時強制送還手続きを開始した問題で、非営利団体が提訴。D.C.巡回区控訴裁判所は、原告団体の主張を認め、差し止め命令と集団訴訟の認定を支持した。反対意見では、北センチネル島の住民に管轄権がないとの指摘もあった。

政府機関の捜査差し止め請求をめ否定した事例

ある男性が、政府機関による捜査を差し止めるよう求めた訴訟で、政府側は「時期尚早」かつ「時期遅れ」の両方を主張。D.C.巡回区控訴裁判所は、いずれの主張も認めず、訴訟の適時性を認めた。実務的アドバイスとして、控訴審で「 plausibility(信憑性)基準」を盾に主張する際には、原告の主張を全面的に認めないよう注意を促している。特に政府が「イランテロ支援資金提供」を理由に財産没収を図る場合、この点が重要となる。

「Short Circuit」ポッドキャスト最新回:第3巡回区を特集

ペンシルベニア大学ロースクールから生配信された最新回のポッドキャストでは、第3巡回区(ニュージャージー、ペンシルベニア、デラウェア、バージニア諸島)の注目判決を解説。差別的取り扱い、避妊具の扱い、半ば容認された幻覚体験など、多様なテーマが取り上げられた。

「司法は市民の権利を守る最後の砦。その判断の裏にある論理を、市民にわかりやすく伝えることが私たちの使命です」
– Institute for Justice

まとめ:連邦司法の最新動向を把握する

「Short Circuit」シリーズは、連邦控訴裁判所の判決を中心に、憲法解釈、人権、行政手続きなど幅広い分野の司法動向を紹介している。最新号では、第四修正条項の解釈変更から始まり、トランスジェンダーの権利、テロ対策、行政手続きの透明性まで、多岐にわたるテーマが取り上げられた。これらの判決は、今後の司法政策や立法に大きな影響を与える可能性がある。

出典: Reason