月経異常や不妊の原因として知られる「多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)」が、新たに「多内分泌代謝性卵巣症候群(PMOS)」へ改称されることが決定した。この名称変更は、40年以上にわたる名称の不正確さが専門家らによって指摘され、14年に及ぶ国際的な議論の末に実現したものだ。
名称変更は、5月21日に開催された欧州内分泌学会議で発表され、医学誌「ランセット」に掲載された。新名称の「PMOS(Polyendocrine Metabolic Ovarian Syndrome)」は、内分泌、代謝、卵巣機能の3つの主要な症状を反映しており、これまでの名称がもたらしていた誤解を解消する狙いがある。
名称変更の背景と目的
これまでの「PCOS」という名称には、卵巣に嚢胞が増加するという誤解が含まれていた。しかし、実際には嚢胞の増加は必ずしも見られず、多様な症状が見過ごされてきたという。モナシュ大学のヘレナ・ティーディ教授(内分泌学者)は、次のように述べている。
「これまでの名称では、卵巣の異常な嚢胞の増加が特徴とされていましたが、実際にはそのような変化は見られません。また、多様な症状が十分に認識されておらず、診断の遅れや治療の不備につながっていました」
名称変更の提案は、世界中の50以上の団体と1万4,000人以上の患者からの意見を集めた14年にわたるプロジェクトの成果だ。新名称の導入は、2028年に改訂される国際的な治療ガイドラインに反映される予定となっている。
新名称が示す症状の変化
PMOSの主な特徴は、以下の3つの領域に分類される。
- 内分泌機能の異常:アンドロゲン(男性ホルモン)の過剰分泌により、月経不順や多毛、重度のニキビなどの症状が現れる。
- 代謝機能の障害:インスリン抵抗性が高まり、2型糖尿病や高血圧、心血管疾患のリスクが上昇する。
- 卵巣機能の低下:排卵障害により、不妊や子宮内膜症、子宮体がんのリスクが高まる。
ティーディ教授は、次のように説明する。
「新名称により、卵巣の嚢胞だけでなく、ホルモンバランスの乱れや代謝異常が中心的な症状であることが明確になります。これにより、患者の早期発見と適切な治療が可能になるでしょう」
PMOSの診断と治療の現状
PMOSは、いまだに簡単な診断法が確立されておらず、根本的な治療法も存在しない。しかし、ホルモン療法や生活習慣の改善によって、症状の管理は可能だ。専門家らは、新名称の導入により、医師や患者の間で認識が広まり、診断率の向上が期待できるとしている。
ティーディ教授は、次のように述べている。
「名称変更は、長期的な健康への影響を改善するための重要な第一歩です。国際的なガイドラインの進化とともに、この名称変更が多くの患者の生活の質向上につながることを願っています」