米国の演劇・舞台従業員労働組合IATSE(International Alliance of Theatrical Stage Employees)は8月19日、ワシントンD.C.にあるケネディ・センターが、トランプ前大統領の指示による2年間の改修工事を口実に、組合員の恒久的な解雇を実施したとして、同センターを提訴した。

IATSEによると、先週の団体交渉の場で、ケネディ・センターの経営陣は「インスタントチャージ部門」と「グループ販売・サブスクリプション部門」の全組合員を恒久的に解雇したことを認めたという。インスタントチャージ部門はオンラインチケットの販売や座席・アクセシビリティに関する顧客対応を担当し、グループ販売部門は学校や地域団体向けのチケット販売を担当していた。

「これは通常の閉鎖に伴う一時的な解雇ではありません」と、IATSEのマシュー・D・ローブ国際会長は声明で述べた。「ケネディ・センターは、一時的な閉鎖を口実に、労働契約と連邦労働法に違反して組合員の恒久的な雇用を奪おうとしているようです」

IATSEはさらに、労働契約上、一時的な閉鎖に伴う労働者保護と支援について経営陣との交渉が義務付けられていると主張。2020年のCOVID-19パンデミック時の閉鎖では、当時のトランプ政権下であってもこの義務を果たしたと指摘する。しかし今回は、経営陣が団体交渉前に解雇通知を送付し、契約で定められた交渉期間中も従業員を雇用し続けることを拒否したという。

同労組は、全米労働関係委員会(NLRB)に不当労働行為の申し立てを行うとともに、ケネディ・センターの観客に対し解雇の実態を知らせるための広報イベントを開催する予定だ。

「雇用主が契約を無視し、労働者の権利を奪うことを許すわけにはいきません」とローブ会長は述べた。「IATSEは、組合員の雇用を守り、ケネディ・センターの責任を追及するために、あらゆる手段を尽くす覚悟です」

ケネディ・センター側はコメントを控えており、今後回答があれば更新される見込みだ。

トランプ政権下で行われた人事と経営の刷新

ジョー・バイデン大統領がホワイトハウスに復帰した直後、トランプ前大統領はケネディ・センターの議長に就任し、忠実な支持者であるリチャード・グレネルを同センターの総裁に任命した。さらに、ニューイングランド・ペイトリオッツのオーナーであるロバート・クラフト、FOXニュースのマリア・バーティロモとローラ・イングラハム、カントリー歌手のリー・グリーンウッドなどの支持者を理事に起用した。その後、ケネディ・センターの外壁にトランプの名前が刻まれることが決定された。

この人事刷新と名称変更を受け、イッサ・レイやリンエン・マニュエル・ミランダなどのリベラル寄りのアーティストが公演をキャンセル。また、ルネ・フレミングやベン・フォールズなどのコンサルタントが辞任する事態となった。さらに、過去1年間でチケット販売が急落したと報じられている。

こうした状況を受け、トランプ前大統領は、ケネディ・センターが今夏(7月4日以降)に2年間の大規模改修工事のために閉鎖されると発表した。この改修工事については、オハイオ州選出の民主党下院議員でケネディ・センターの理事を務めるジョイス・ベイティー氏が、議会の承認を得ずに承認されたとして法的措置を検討している。同議員は「ケネディ・センターの閉鎖が議会の承認を得ていないこと、およびその他の違法行為について、速やかに法廷で争う」と述べた。

出典: The Wrap