ニューヨーク州ロックランド郡は2024年、同郡内オレンジバーグ地区にあるJPMorganチェースのデータセンター拡張計画に対し、州・地方税の控除を含む総額約7700万ドルの公的支援を承認した。しかし、その見返りとして同社が提示したのは、わずか1人の常勤雇用の創出のみだった。
公的支援団体「Reinvent Albany」はこの取引を「米国史上最大規模の公的補助金」と批判。地域経済への実質的な貢献が乏しいプロジェクトに公的資金が投入されることに疑問が呈されている。
データセンター拡張の実態
JPMorganチェースは2017年からオレンジバーグのデータセンターを所有。もともと汚染された工業跡地だった同施設は、現在70人(ニューヨーク・フォーカス紙によると25人)を雇用している。2024年の拡張計画では、新たに150人の地元建設業者の雇用が見込まれるものの、常勤雇用はわずか1人増加するのみだという。
短期雇用 vs 常勤雇用
データセンター業界では建設工事の雇用創出が強調される傾向にあるが、ブルッキングス研究所によれば、こうしたプロジェクトは「持続的な地域経済効果が乏しい」と指摘されている。特に常勤雇用の創出は限定的で、大規模な雇用創出にはつながりにくいとされる。
公的支援の是非を巡る議論
「ロックランド郡は実質的に何の見返りも得られないのに、大量の公的資金を投入している」。公的補助金監視団体「Good Jobs First」のシニアリサーチアナリスト、カシア・タルチンスカ氏はニューヨーク・フォーカス紙にこう批判した。
一方でロックランド郡インフラ開発庁(IDA)は、常勤雇用の創出は少ないものの、電気技師など地元業者への継続的な発注により1億ドル以上の経済効果が見込まれると主張。JPMorganチェース側もニューヨーク州最大の雇用主の一つであり、年間約400億ドルの経済貢献があると反論している。
データセンター建設への反対運動拡大
ロックランド郡IDAが2024年に実施した公聴会には参加者がおらず、わずか2週間後に支援が承認された。当時はデータセンターの問題点が広く認知されていなかったが、現在では全米で反対運動が拡大。2025年にはChange.orgでデータセンター関連の請願が50,000人以上の署名を集め、2024年のわずか1件から大幅に増加している。