SXSW、AI商標検知ツールで批判封じ?非営利団体の投稿が不当削除

毎年3月にテキサス州オースティンで開催されるテック・音楽・映画の祭典「SXSW」が、商標侵害を自動検知するAIツールを悪用し、批判者の投稿を不当に削除していたことが明らかになった。SXSWは1987年に始まった比較的小規模なイベントから、巨大な企業イベントへと変貌を遂げ、多くの批判にさらされている。

今年のSXSWでは、老朽化したコンベンションセンターの解体に伴い、会場がホテルの宴会場や空き地などに拡散。しかし、その変化はイベントの性格をより企業寄りにし、一般市民のアクセスを困難にしているとの指摘もある。

商標侵害検知AIが引き起こした不当な投稿削除

SXSWは、BrandShieldと呼ばれる「デジタルリスク保護サービス」を利用し、商標の無断使用を自動検知・削除していた。BrandShieldは、ソーシャルメディア上の投稿から商標の無断使用をAIで特定し、自動的に削除するシステムを謳っている。

そんな中、ホームレス支援団体Vocal Texasが、SXSWの開催に合わせて行った抗議活動の投稿が削除される事態が発生した。Vocal Texasはホームレスの支援を目的とする非営利団体で、貧困や薬物戦争の撲滅も掲げている。

3月12日、Vocal Texasのメンバーはダウンタウンのオースティンで「Sweep the Billionaires(億万長者を一掃せよ)」と題した模擬キャンプを設置。ホームレスの人々が「掃除」と呼ばれる強制立ち退きの際に、テントや生活必需品を没収される現実を訴えた。彼らの投稿には、SXSWのロゴは一切使用されていなかったが、SXSWという名称の言及だけでBrandShieldの商標検知システムに引っかかり、自動的にInstagramから削除された。

投稿の内容は以下の通りだった:

「SXSW開催中、ダウンタウンのホームレスの人々はテントの強制撤去、罰金、逮捕に直面する。一方で市は億万長者や大企業に利益を還元するためのスペースを確保している」

この投稿に添付された画像は、SXSWのロゴを使用しておらず、芸術的なインスタレーションを紹介する内容だった。しかし、商標の無断使用とみなされ、完全に自動化されたプロセスで削除されたのだ。

商標法の「表現の自由」例外を無視した過剰な削除

電子フロンティア財団(EFF)の上級スタッフ弁護士であるCara Gagliano氏は、このような投稿が商標侵害に該当しないと指摘する。

「企業名を使ってその企業について語ることは、当然許されるべきです。他にどのように表現すればいいのでしょうか?」とGagliano氏は404 Mediaに語った。

彼女は、商標法には批判的な発言を保護するための明確な例外規定が存在すると説明する。例えば、SXSWの名称を無断で使用してコンサートの宣伝を行う場合などは商標侵害に該当するが、今回のような批判的な発言は明らかに過剰な対応だという。

EFFは2024年3月にも、Austin for Palestineという団体がSXSWから受けた商標・著作権侵害の警告状に介入した。同団体は米軍のスポンサーシップに抗議するデモを主催し、SXSWの矢印ロゴを血で染め、戦闘機の画像を重ねた投稿を行っていた。EFFの介入により、同団体はSXSWからの連絡を受けることはなくなった。

しかし、Gagliano氏によれば、BrandShieldによる投稿削除はこれとは異なる問題だという。「警告状が送られた場合、当事者が沈黙すれば問題は解決します。しかし、投稿が削除されてしまうことで、表現そのものが抑圧されるのです」と彼女は指摘する。

SXSWの商標戦略と表現の自由のバランス

SXSWは、商標の無断使用を防ぐためにBrandShieldのようなツールを導入したが、その運用が行き過ぎているとの批判が上がっている。商標法は企業の権利を保護する一方で、批判的な発言や報道の自由も保障している。AIによる自動削除システムが、このバランスを崩している可能性がある。

Vocal Texasの事例は、商標侵害を名目とした不当な投稿削除が、社会的な問題の告発を封じる可能性を示している。今後、SXSWや他のイベントが同様のツールを使用する際には、表現の自由と商標保護のバランスに配慮が求められるだろう。

出典: 404 Media