ハリウッドはAI技術の到来を「既成事実」と捉える向きもあるが、未だに人間が制作した映画が主流だ。AIが完全に生成した大作映画は未だに公開されていない。

そんな中、2022年に「完全なAI映画が2年以内に登場する」と発言したのが、『アベンジャーズ/エンドゲーム』の監督ジョー・ルスーだった。ルスーはコライダー誌のインタビューで、AIが「物語の民主化」を実現し、新進気鋭のアーティストに力を与えると主張した。

ルスーの具体的なビジョンは、視聴者がAIを活用して自分だけの映画を作るというものだった。例えば、自宅でストリーミングサービスのAIに「自分のフォトリアルなアバターとマリリン・モンローのアバターを使ったロマンス映画を作って」と指示すると、AIが即座にストーリーや台詞を生成してくれるという。

ルスー監督のAIへの過剰な期待

ルスーはAI企業の役員を務めるなど、AI技術の推進者として知られる。しかし、彼の予測は現実から大きく乖離している。2025年に公開されたルスー監督作『エレクトリック・ステート』は、AIの影響を指摘されたにもかかわらず、出来映えは芳しくなかった。

ルスーは同作の公開直後、AIによるボイスモジュレーションを使用したことを明かした。また、ハリウッドでAIが普及しない理由について「人々がAIを恐れ、理解していないから」と主張した。

AI技術の現実と理想のギャップ

ルスーのようなAI推進派は少なくないが、その進化スピードは予想をはるかに下回っている。AIは裏方作業で活用されることはあっても、完全な映画制作にはまだ程遠い。ルスー監督の作品ですら、AIが生成したとしか思えない出来栄えだった。

ハリウッドにおけるAI技術の導入は、技術的な課題だけでなく、倫理的・社会的な抵抗も大きい。AIが映画制作に与える影響は、今後も議論の的となるだろう。

AI技術の未来とハリウッドの課題

ルスーの予言が実現しなかった背景には、AI技術の限界とハリウッドの保守的な体質がある。AIが完全に映画を制作する日は、当面は訪れそうにない。

一方で、中国のNetflix競合サービスがAIを活用した低品質コンテンツを大量に配信し始めるなど、AI技術の活用は他の分野で進んでいる。ハリウッドも今後、AI技術とどう向き合うかが問われることになる。

出典: Futurism