NASAのアルテミス2号、月周回を終え地球帰還へ
NASAの有人月探査ミッション「アルテミス2号」が、月周回軌道を無事完了し、現在地球への帰還に向かっている。米東部時間午後8時直前、オリオン宇宙船のクルーモジュールが推進モジュールから分離され、地球大気圏への再突入が始まる。
時速23,000マイル超の高速再突入、5,000度の熱に耐える耐熱シールド
クルーモジュールは時速23,000マイル(約37,000km/h)以上で大気圏に突入し、13分間で減速。その間にシールド表面は5,000度(約2,760度)まで加熱される。その後、3基のパラシュートで太平洋への着水を目指す。この過酷な再突入時の安全を担うのが、厚さ数インチの耐熱シールドだ。
過去のミッションで判明した深刻な損傷
2024年にNASA監察総監室が発表した報告書によると、無人ミッション「アルテミス1号」後の調査で、耐熱シールドに100カ所以上の深刻なクラックと剥離が確認された。炭化した断片が脱落し、極限環境下での耐久性に疑問が生じていた。
専門家が警告する「危険な判断」
「彼らが計画していることは狂気の沙汰だ。この問題はずっと前に解決できたはずだ。それなのに彼らは問題を先送りし続けている」
チャーリー・カマーダ元NASA宇宙飛行士、熱シールド専門家
カマーダ氏はCNNの取材に対し、NASAが「修正された再突入軌道」を採用すると発表した2024年12月にも同様の懸念を表明。2025年1月には「祈るしかない」と述べ、95%の確率で乗員の安全な帰還を願うと語った。
NASAの対応:スキップ再突入でリスク低減を図る
NASAはアルテミス1号の教訓を踏まえ、再突入方法を「スキップ再突入」に変更。宇宙船が大気圏を一時的に跳ね返るように飛行し、加熱時間を短縮することで安全マージンを確保したと主張する。
「再突入プロファイルを修正し、安全マージンを回復した。アルテミス2号のクルーの安全に自信を持っている」
ジャレッド・アイザックマンNASA長官
NASA幹部のアミット・クシャトリヤ氏も「過去9日間で実証された生命維持、航法、推進、通信システムは全て、飛行の最終段階に依存している。耐熱シールド、パラシュート、回収システムに高い信頼を置いている」と述べた。
批判は収まらず、過去の悲劇が重くのしかかる
カマーダ氏はニューヨーク・タイムズの取材で、スペースシャトル時代の悲惨な事故を引き合いに出し、「NASAは安全性を証明するデータを持っていない」と指摘。その一方で、自身の懸念にもかかわらず、ミッション成功への期待を込めた発言を繰り返した。
今後の展望と課題
アルテミス2号の帰還成功は、月面着陸を目指すアルテミス計画の次のステップにつながる。しかし、耐熱シールドの安全性に対する懸念は払拭されておらず、NASAは今後も技術的課題に直面する可能性が高い。ミッションの成否は、単なる技術的成功にとどまらず、有人宇宙飛行の未来を左右する重要な試金石となる。