ニューヨーク証券取引所で株価を映すモニターが赤一色に染まった2020年2月28日。人々が公共の場から去り、病院が満床になったコロナ禍の初期、私は2017年に発表した雑誌記事の表紙がソーシャルメディアで拡散されているのを目にしていた。その記事は、次なるパンデミックへの警告を発する内容だった。

「警告:我々は次のパンデミックに備えていない」 — 2017年5月、TIME誌に掲載されたこの記事は、SARS(2003年香港)、H5N1鳥インフルエンザ(2007年インドネシア)、H1N1インフルエンザ(2009年)など、感染症の脅威を長年にわたり取材してきた筆者による警鐘だった。しかし、2020年1月から2月にかけて、中国で感染が拡大し始めても、筆者を含む多くの専門家は「やがて収束するだろう」と楽観視していた。

当時の米国の反応は、2月25日にドナルド・トランプ大統領が「コロナはやがて消滅する」と発言したように、楽観的な見通しが支配的だった。だが、その結果は周知の通り、世界的な経済活動の停止という未曾有の事態に発展した。

再び繰り返される「見落とされる危機」

現在、私たちは再び同じ過ちを犯そうとしている。その対象は、イランとの戦争、そしてホルムズ海峡の閉鎖だ。この危機が経済に与える影響は、コロナ禍をはるかに上回る可能性がある。

国際エネルギー機関(IEA)によると、ホルムズ海峡の閉鎖は、世界の石油供給を1日あたり1000万バレル以上も減少させる史上最大級の供給ショックだ。1973年の石油危機では世界供給の7%が失われたが、ホルムズ海峡の閉鎖はそれよりも大きな13%の供給減少を引き起こす可能性がある。さらに、戦争によるインフラの損壊が長期化すれば、その影響はさらに深刻化する。

経済への波及効果

  • エネルギー価格の高騰:石油供給の逼迫は、ガソリンや航空燃料などの価格上昇を招き、消費者の負担増加やインフレ圧力を引き起こす。
  • サプライチェーンの混乱:中東からの原油・天然ガスの供給が滞れば、世界の製造業や物流に深刻な影響を及ぼす。
  • 金融市場の不安定化:エネルギー価格の急変は株式市場や為替市場に混乱をもたらし、投資家のリスク回避が進む可能性がある。
  • 地政学的リスクの拡大:イランとの緊張が高まれば、中東全体の安定性が脅かされ、さらなる経済的な混乱を招く恐れがある。

歴史は警告する

「歴史は繰り返す。一度目は悲劇として、二度目は喜劇として」とマルクスは述べたが、経済的な危機においては、同じ過ちが繰り返されることが多い。コロナ禍では、警告があったにもかかわらず、世界は十分な備えを怠った。今、イラン戦争の経済的影響についても、同様の「見落とし」が起きている。

専門家たちは、ホルムズ海峡の閉鎖が長期化すれば、世界経済はコロナ禍を上回る打撃を受ける可能性があると指摘する。しかし、市場はまだそのリスクを十分に織り込んでいない。株式市場は依然として歴史的な高値圏にあり、経済の先行きに対する楽観的な見方が支配的だ。

今、何をすべきか

このようなリスクを回避するためには、まずは現実を直視することが不可欠だ。エネルギー供給の多様化、代替エネルギーの開発、そして地政学的リスクへの備えを強化することが求められる。また、企業や政府は、サプライチェーンの見直しや在庫管理の最適化を進め、リスク分散を図る必要がある。

コロナ禍の教訓から学び、同じ過ちを繰り返さないために、今こそ行動を起こす時だ。

出典: Vox