ウクライナの支援が招いた想定外の結果
西アフリカにおけるアルカイダの最も急速に拡大している支部が、JNIM(イスラム・マグレブ諸国のアルカイダ)だ。先週、元ロックミュージシャンのイアド・アグ・ガリ率いるJNIMはマリ共和国で大規模な反政府蜂起を開始し、複数の都市を制圧。国防大臣サディオ・カマラを殺害し、首都バマコへの圧力を強めた。
この攻勢を支えたのが、ウクライナで訓練を受けたドローンパイロットだった。少なくとも2年にわたり、ウクライナの諜報機関は、ロシア軍が支援するマリ政府に対抗するため、未承認のトゥアレグ人国家「アザワド」を支援していた。今週、アザワド解放戦線は「バマコ軍事政権に対抗するため、JNIMとの提携を発表した」と宣言した。
ドローン戦術の共有が招いた同盟
アザワド解放戦線は、ウクライナでドローン戦術を学んだ fighters であり、現在はアルカイダに対して空爆支援を行っている。技術的には、ウクライナが直接アルカイダを支援しているわけではない。アザワド独立運動はJNIMよりも古く、かつてはイスラム主義組織と対立していた。しかし現在は、ウクライナの支援を受けたトゥアレグ勢力が、アルカイダの領土拡大を助ける形となっている。
これは、ウクライナにとっては意図せぬ「外交政策の逆風」だ。ウクライナはロシア軍の打撃を目的にアザワドを支援したが、結果的にアルカイダの台頭を助ける結果となった。同様の支援はスーダンやシリアでも行われており、2022年にはマリ政府がフランス軍を追放し、ロシアの傭兵部隊を招き入れた。これに対し、ウクライナはアザワドへの支援を強化。2024年7月の奇襲攻撃では、ウクライナで訓練されたトゥアレグ人ドローンパイロットがロシア軍を多数殺害した。
欧米諸国にとっての深刻なジレンマ
しかし、ウクライナの同盟国である欧米諸国にとって、この戦略は深刻な問題を引き起こしている。フランス外交筋は「ロシアの介入の失敗を示す証拠」と皮肉を交えて語る一方で、フランス政府は自国民に対し「極めて不安定な状況」からの避難を呼びかけている。欧州連合と米国は、JNIMとアザワド解放戦線の行動を「テロ攻撃」と非難した。
米軍は2007年以降、アフリカにおけるアルカイダとISISの浸透を防ぐため、数億ドルを投じてきた。しかしその間、アフリカ全土の攻撃件数は10万%増加。JNIMはその最大の受益者の一つとなり、少なくとも6カ国で数千人の fighters を募集している。今週の攻勢により、アルカイダがマリ全土を支配する可能性が浮上した。
アザワド解放戦線は、JNIMとの同盟の一環として「イスラム法の導入」に合意したと報じられている。この状況は、米国の過去の外交政策にも似たジレンマを引き起こしている。1980年代、米国はカンボジアの反共主義勢力を支援したが、その勢力はかつての王族や首相が率いるグループで、後にポル・ポト派と連携する可能性があった。
ウクライナの戦略的ジレンマ
ウクライナにとって、アザワド支援はロシア軍への打撃という短期的な目標を達成している。しかし、その代償としてアルカイダの台頭を助けるという、長期的なリスクを負うこととなった。ロシア軍との戦いでは効果的だった戦術が、今度はテロ組織の拡大を招く可能性がある。
欧米諸国は、ウクライナの支援がテロ組織の拡大につながる可能性を懸念している。その一方で、ロシアの影響力を削ぐためには、ウクライナの戦略が必要不可欠とも考えている。このジレンマは、ウクライナ戦争が単なる地域紛争にとどまらず、グローバルな安全保障上の課題となっていることを示している。